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被害女性が出廷 犯行の動機質問2009年08月21日 佐賀市内の女性宅に押し入り、強姦(ごう・かん)してけがを負わせた上、現金などを奪ったとして強盗強姦などの罪に問われている福岡県久留米市の無職、深川一浩被告(37)の初公判が20日、佐賀地裁(若宮利信裁判長)であった。この裁判にも被害者参加制度が適用され、被害女性が深川被告に犯行の動機を質問し、検察側の求刑より11年長い懲役を求刑して結審した。同制度の下で性犯罪被害者が法廷に参加したのは県内初とみられる。 「なぜ、狙ったのですか」 被告人質問で、被害女性は代理人の弁護士を通じ、真っ先にそのことを尋ねた。 「特に理由はなかった」。誰でも良かった、との旨を被告はか細い声で答えた。 起訴状によると、被告は3月20日午後6時45分、女性宅に侵入し、女性の顔をタオルで覆って「殺すぞ」と脅し、強姦した上でけがを負わせ、現金2万5千円などを奪って逃走したとされる。被告は起訴事実を認めた。 検察側は冒頭陳述で、被告が約10年前から、パチンコ代欲しさからサラ金などで約200万円の借金を作り、返済に困って強盗に及んだと指摘。強姦は場当たり的犯行だったとした。被害女性の代理人によると、検察側による犯行状況の説明の際、女性は泣きそうな様子だったという。 被害女性は法廷参加を事前告知せず、自身の名前も公表されないことを確認して参加を決めた。法廷では被告や傍聴席から見えないよう、ついたて越しに参加。制度上、被告に対してじかに質問することもできるが、「被告に声を聞かれたくない」との理由から、代理人の弁護士を通じてすることになったという。 被告人質問では、「強姦は性的な快楽を満たすためだったのか」「借金返済と被害弁償を同時にできるのか」などと約30分間、質問した。 意見陳述も代理人の弁護士が代読。「お金を奪ったばかりでなく、女性にとって一番大事なものまで奪い去った。絶対に許すことができません」と思いを訴え、「本当は、憎くてたまらない被告と二度と会いたくなかった。勇気を出して法廷に来たのは、私の思いをこの裁判を通じて伝えたかったから」と制度を利用した思いも語った。 検察側は懲役14年を求刑。これに対し、被害者側は懲役25年を求めた。有期の最高刑である30年を考えたが、奪われた金が弁護士に弁済されたことなどを考慮したという。 また、有罪判決を受けた被告に同じ裁判官が被害者への賠償を命じる「損害賠償命令制度」の申し立て(手数料2千円)は、被告に支払い能力がなく手数料が無駄になる恐れがあり、見送ったという。「結局、泣き寝入りするしかない」とも意見陳述した。 弁護側は、「被告は1年前から失明した母と同居し、日常的な世話を行っている」などとして「情けのきく判決を」と情状酌量を求めた。 判決は9月10日の予定。
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