弘前大学医学部付属病院に入院していた元患者が診療費などを滞納しているとして、弘前大学(遠藤正彦学長)は元患者に対し滞納分の返済を求め、弘前簡易裁判所に提訴したことを、28日発表した。弘大が診療料金未納者に対し、法的手段を取るのは今回が初めてで、今後も支払い能力がある未納者に対しては同様の措置を講じる方針。
 訴状によると、弘前市在住の元患者は2004年9月30日から同11月26日まで同病院に入院。入院費など84万6745円の請求に対し、05年1月から08年3月まで10回にわたり、合計11万1820円を支払ったが、73万4925円を滞納している。
 同病院によると、この患者は支払い能力があるにもかかわらず、同病院職員が何度も電話連絡、特定記録郵便、自宅訪問などで未収金分を返済するよう求めてきたが応じず、連絡が取れないこともあったという。
 同病院側は「債務者に対しては生活に配慮し、慎重に回収を進めている」とし、「今回は十分な支払い能力があるにもかかわらず督促に応じないため、顧問弁護士と相談の上、法的手段に踏み切った」としている。
 同病院の08年度末の未収金累計は約1億2000万円に上っており、支払いをしていない人の大半は生活困窮者だという。
 同病院は高額医療費が必要となる入院診療患者や家族に対して、高額医療費制度の限度額適用認定証の提示を勧めたり、出産育児一時金の受け取り代理などについて説明するなど、未払いが起きないよう対策を取っている。
 同様の未収金は他の病院でもあり、弘前市立病院では07年度末で約5500万円、国立病院機構弘前病院は08年度末で約3360万円となっている。両病院とも電話などで督促しているが、これまで未納者に対し法的手段を取ったことはない。