◆NNNドキュメント’09 「隣町まで25時間 産めない島…小笠原の女たち」 日本=9月6日深夜24:50
東京都心から約1000キロ南の孤島、小笠原村。約2400人の比較的若い世代が多いこの村には7年前から産科医がいない。緊急で帝王切開が必要になっても手術の設備がなく、麻酔科医もいない。空港もない。ないない尽くしの島で子供が産めない妊婦は、片道25時間かけて船で本土に向かわなければならない。
身重の体にこの船旅はあまりに過酷だ。かつて船の中で流産してしまう不幸があった。番組に登場する女性は、島を出る直前の検診では「異常なし」だったが、東京に着いたときは逆子になっていた。
本土には3カ月ほど滞在しなければならず、費用は莫大(ばくだい)だ。こうした障害を乗り越えて新しい命を世に送り出す親たちの姿に拍手を送りたくなる。一方で個人にこれほどの負担と不安を強いる国のあり方に改めて疑問がわく。
大病院があり、交通アクセスが島よりはるかに便利な本土でも、産科医不足で妊婦が受け入れ拒否される事態がしばしば報じられている。「少子化担当大臣」というポストのあるわれらが祖国だ。現状が放置されていいはずがない。明日は衆院選の投票日。少子化対策に関する、各党の公約を見直す気になった。【栗原俊雄】
毎日新聞 2009年8月29日 東京夕刊
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