社説
09衆院選 連立の在り方も考えたい
「政権選択」が最大の焦点となる衆院選公示が18日に迫っている中で、残念なことがある。
民主党中心の連立政権ができた場合の共通公約の公表が、自民、公明の与党に比べて遅れていることだ。
自民、民主両党の対決に注目が集まる今総選挙だが、どちらが第1党となっても政権の安定運営には他党との連立が不可避だ。自公は与党の枠組み維持を掲げ、民主は社民、国民新両党との連立を表明している。
つまり、政権選択とは二大政党の選択にとどまらず、連立の枠組み選択を意味する。各党のマニフェスト(政権公約)とともに、与党として連立した際の公約を明らかにして初めて政権選択選挙の形が整う。
とりわけ民主、社民、国民新の各党は、外交・安全保障問題で考え方に隔たりがある。非核三原則の堅持を求める社民党が、米国の核持ち込み密約に対して「現実的な対応」との認識を示した民主党の鳩山由紀夫代表に反発したことは記憶に新しい。
外交・安保政策は日本の平和の土台である。3党がこれをどう取り扱うかは国民が注視しているはずだ。
異なる政党の共通公約作りに時間が必要なのは分かるが、個別マニフェスト公表に向けた対応と比べ、スピード感に欠ける印象は否めない。
鳩山代表は12日の党首討論で、連立政権の基本方針について「政調レベルで3党の基本的な共通政策を考えており、ほぼ出来上がった。いつ打ち出すのが重要か最後の判断をしている」と語ったが、悠長過ぎる。
既に10年近い連立政権運営の実績がある自民、公明両党とは事情が違うのである。政権交代実現を目指すなら、もっと積極的にリーダーシップを発揮するべきだ。有権者が民主党に対して抱いている不安を取り除くためにも不可欠な態度だろう。
1994年に成立した「自社さ」政権以降、国政では比較第1党の座を占める自民党を補強し、安定させる形で連立政権が続いてきた。しかし、本格的な二大政党時代を迎え、政治状況は大きな転換期にある。
そうした時代の中で、情勢によっては小政党の政権への影響力が強さを増していく可能性がある。
社民党と国民新党はそのことを自覚し、総選挙後に担うかもしれない責任を踏まえた対応をしてほしい。変化を見せてこそ、国民に「政権選択」選挙を実感させることになる。
有権者もこれまで以上に連立政権の在り方に目を凝らしたい。それは二大政党制の中で政治や政策の二者択一化が進むことを防ぎ、多様性を確保することにつながるはずだ。
[新潟日報8月14日(金)]