社説

09衆院選政権選択/政策競争が歴史の扉を開く

 第45回衆院選がきのう公示され、30日の投開票に向けて選挙戦がスタートした。小選挙区比例代表並立制が導入されて5回目となる総選挙は、本格的な政権交代があるかどうかが最大の焦点となる。

 1990年代の一時期を除き半世紀以上、政権の座にあった自民党政治にノーを突き付けるのか、それとも民主党を中心とした政権にバトンを託すのか。二大政党を中心とした選挙戦への1票は、歴史を画す選択となるだろう。まずはその重い意味をかみしめたい。

 立候補者は全国で1374人。自民、民主両党は300の小選挙区のうち、263選挙区で対決する。

 内閣府が先日発表した国民生活に関する世論調査によると、「去年と比べ生活は向上している」と答えた人は2.8%にとどまり、1965年に質問を始めて以来、過去最低となった。

 昨年秋の米国発の金融危機以降、人々の暮らし向きに対する不安は特に強まった。世を経(おさ)め民を済(すく)う―。こんなときこそ「経世済民」が眼目である政治の出番なのに、民意と永田町との距離は広がるばかりだった。

 先進国では異例の政権交代なき民主主義が、この国の停滞感と閉(へい)塞(そく)感を一層深いものにしてきた。万年与党と万年野党がすくみ合う国会では、政治に緊張感など生まれるはずもない。

 「政党間の競争活発化こそが新たな思考を促進する」。日本政治を論じた英紙タイムズの社説(7月15日付)が指摘する通り、政権を懸けた与野党激突が、停滞脱却の鍵を握ることは疑いようがない。

 4年前の郵政選挙で、小泉純一郎元首相は民営化反対派を排除。族議員と官僚機構を敵と見なすことで世論を味方につけ、自公両党で3分の2を超える議席を獲得する大勝に導いた。

 一方で小泉構造改革路線で、市場の規制緩和と社会保障や地方財政の削減を進めた結果、富める者(地域)とそうでない者(地域)との格差が広がった。

 麻生太郎首相は「行き過ぎた市場経済原理主義から決別する」と強調するが、小泉路線の総括としてはいかにも中途半端だ。それが官僚主導、利益誘導という古い政治文化への先祖返りを意味するなら、首相の言う「責任力」には疑問符が付こう。

 対する民主党はどうか。反自民の受け皿として支持を集め、宿願である政権奪取が現実味を帯びてきた。

 だが、目玉政策である子ども手当や高速道路無料化などの財源がきちんと示されていないことに疑問を持つ国民は多い。消費税に対する考え方や安全保障政策面でのあいまいさも、アキレスけんとなる可能性がある。

 二大政党化の利点ばかりが強調されるが共産、社民、国民新など小政党の役割を軽視するわけにはいかない。大政党がすくい切れない環境や平和など生活に密着した政策課題を提示し、存在感をアピールしてほしい。

 将来不安をぬぐうために、政治が果たすべき役割は明確な国の形を示すことだ。12日間の論戦はそのためにこそある。

2009年08月19日水曜日

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