2009年8月26日11時33分
【ワシントン=望月洋嗣】銃を突き付け、親族の拘束をほのめかして脅す――。米司法省が24日に一部を公開した米中央情報局(CIA)の報告書で、ブッシュ前政権下でテロ容疑者に対して用いられた尋問方法が新たに明るみに出た。司法省は、取り調べの違法性について捜査を始めるが、実態の解明は党派対立や米国への反感を呼び起こす危険もはらむ。
司法省が米情報公開法に基づいて公開したのは、CIAが04年5月にまとめた最高機密の報告書。109ページの本文の大半が黒塗りだが、尋問の実態を記した部分は公開されており、「銃と電気ドリル」「脅迫」「寒さ責め」などの項目ごとに具体的な尋問の様子が詳しく書かれている。
00年の米駆逐艦爆破事件に関与した容疑者は、銃や電気ドリルを突きつけられ、供述しなければ母親や家族を拘束すると脅された。さらに、取調室のすぐ外で別の容疑者が拳銃で処刑されたような「演技」も仕掛けられた。
別の容疑者には、後ろ手に縛った腕を持ち上げて脱臼させようとしたり、意識を失うほど頸動脈(けいどうみゃく)を絞めたうえで揺さぶって起こしたりするなどの方法も用いられた。
ブッシュ前政権は「テロとの戦い」を名目に、過酷な方法の一部を容認。現場の取り調べ要員は、過酷な尋問が司法省の指針の範囲内かを上司に問い合わせており、組織的な関与の疑いも濃厚だ。
これに対し、オバマ大統領は過酷な尋問方法を就任直後に禁じ、前政権が尋問の指針を示した覚書も公開した。しかし、ブッシュ政権の責任の追及が党派対立につながることをおそれ、捜査には消極的とみられていた。
ただ、「拷問」ともとれる手法を用いた「テロとの戦い」への批判が再び高まることで、国際テロ組織アルカイダなどに付け入るすきを与えるとの懸念も、政権内には根強いとみられる。
刑事事件化に向けた予備捜査の開始を24日に決めたホルダー司法長官は「私の決断が論争を呼ぶことは自覚しているが、これが唯一の責任ある対応だ」と理解を求めた。