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二大政党制 多様な民意をどうする


 衆院選の最大の焦点は、紛れもなく政権選択。自民、民主両党ががっぷり四つに組んだ争いを展開している。わが国でも、政権交代が可能な二大政党制の時代が幕を開けたといえるかもしれない。

 とはいえ、この衆院選で定着するかは未知数だ。両党とも国民のすべての思いを代弁できるわけではない。ましてや、選挙結果によっては政界再編もありうる。

 直近の国政選挙だった2007年の参院選は民主が大勝し、自民は初めて第1党から転落した。比例代表の得票率を見ると、民主が39%、自民が28%を獲得した。一方、公明、共産、社民、新党日本、国民新党の各党は合わせて30%を超えた。

 自民が圧勝した05年の衆院選の比例代表でも、自民と民主の数字が逆転しただけで、他の5党の得票率は30%余で変わらない。この数字は極めて重い。

 有権者の価値観は多様化している。選択の基準となるテーマは経済、環境、福祉、護憲、地方など多岐にわたる。比例代表ではそれが率直に表れる。決して二者択一の枠には収まりきれない。

 二大政党の「受け皿」からこぼれ落ちる層が常にあることを思えば、多様な民意をくみ上げるシステムはあった方が良い。

 この点で選挙制度の変革には慎重であるべきだ。民主党がマニフェスト(政権公約)で、比例代表を大幅に減らそうとしていることは疑問だ。自民党も削減をうたっているが、その対象は明確にされていない。

 国民が二大政党制を望んだとしても、ゆっくりと収れんされていくべきものだろう。制度によって強引に推し進めるものではない。それは少数意見を捨てることになる。

 自民党が公明党と連立してから既に10年近くの時間がたつ。一方、民主党もこの選挙で勝てば、社民、国民新両党との連立政権をつくることを明言している。日本の政治は間違いなく連立の時代になっていく。

 小政党はそこに活路を見いだせるのではないか。少数意見を代弁しながら、連立相手の大政党の暴走をチェックする機能が期待される。自公政権では公明党がその役回りだった。

 社民党が民主党中心の政権に参加すれば、安全保障の問題は政権の火種にもなるが、内からブレーキを踏むこともできる。是々非々の「建設的野党」の立場を表明した共産党は、外から政権をチェックする道を選んだ。

 政権を争う二大政党のはざまに埋没するのか、それとも確固とした存在感を示せるのか。小政党は重大な岐路に立っている。

 この選挙で政権交代が起きたとしても、起きなかったとしても、望みたいのは国民の思いが離れれば主役の座から退場させられるという緊張感のある政治だ。

 この選挙はそうした状況をつくり出せる絶好の機会。ぜひ生かしたい。

村井康典(2009.8.20)

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