きまぐれな日々

7月の当ブログへの月間アクセス数は、「西松事件」のあった今年3月を上回って過去最多を記録、初めて月間のアクセス数が20万件を超えた。7月の最後の週になっても、過去最多には間違いないにしても月間で18万件台かなと思っていたのだが、月末の城内実選挙ポスター事件でアクセス数が急増し、月末の31日に20万件の大台に載った。

そのうち約4%に当たる8276件が、昨年11月20日付エントリ「テロ行為と極右政治家・城内実だけは絶対に許せない」へのアクセスだった。8276件のうち、月の最後の4日間だけで7809件を数えた。さらに、7月30日と31日の2日間だけで7202件に達した。いうまでもなく私はポスターの一件よりも、国籍法改正に絡んで城内のレイシスト的考え方を露呈した、城内の公式サイト内にあるブログ記事 "bakawashinanakyanaoranai" の方がずっと問題だと考えているから、これを取り上げた当ブログのエントリがアクセスされることは大いに歓迎している。

とはいえ、7月31日に突如この件に関する「ネット世論」(というより2ちゃんねるで大勢を占める論調)が180度変わったことに触れないわけにはいかない。この話題から早く離れろという読者の声もあるが、率先して城内実批判を行った当ブログとしては、今日のエントリだけはこの件から逃げるわけにはいかない。

実は、31日の夕方から昨日(2日)の夜まで出かけていて、土曜日(1日)早朝のタイムスタンプのある記事は出先で書いたものだ。これを書いた時点で私はデイリースポーツが、というよりYahoo!ニュースが「眞鍋かをり写真使用は無断じゃなかった」という見出しをつけていたとは知らなかった。だから、それまでと同じ流れで書いていたし、「仲介者」(実際には城内実の代理人的な働きをした)がFAXを通じて証言したとはいっても、それは城内実が当初からの主張していたことの裏づけにはなっているとはいっても、肝心の眞鍋かをりさんが写真の使用を認めないと言っていることに何の変わりもないのに、なぜ急にブログに対する風当たりが強くなったのかさっぱり理解できなかった。

この経緯をくどくど書くとまた記事が不必要に長くなるが、幸い、『玄倉川の岸辺』が、「勇敢な眞鍋さん、情けない城内氏」と題した、簡潔かつ秀逸な論評のエントリを上げているので、是非ご参照いただきたい(下記URL)。
http://blog.goo.ne.jp/kurokuragawa/e/722d7c3b9235013425b8c1b30eea2d3b

要は、つけた見出し一つで記事の印象は大きく変わり(もちろんデイリーの記事自体も片側の当事者から裏をとっていないひどい飛ばし記事だが)、それによって「2ちゃんねる」世論が右往左往したということだ。「はてな」世論は2ちゃんねると比較するとかなり冷静で、デイリースポーツの記事についた「はてなブックマーク」も賛否両論というよりはむしろ城内実に批判的なコメントの方が多い。

ところで、『玄倉川の岸辺』は、管理人さんが「小泉ファン」とのことで、普段は当ブログとは意見があまり合わず、接点も少ないのだが、ひところかなり接点があった時期がある。それは、昨年リベラル・左派系ブログの世界で話題になった「左のほうの水伝騒動」に関するもので、『玄倉川の岸辺』は、昨年1月19日付エントリ「左のほうの「水からの伝言」騒動を観察する」を皮切りに、この騒動に鋭い批評を加えた。そして、昨年8月までは当ブログもこの件にはかなり深くかかわった。

なぜそのことを蒸し返すかというと、今回の事件で最初城内実が「無断使用はしていない」と主張し、ポスターの使用にこだわった姿勢を見せた時、城内は初期の対応(以後、「初動」と表現する)を誤ったな、まるで「水伝騒動」の時に最初に批判を受けたブログみたいだな、と思ったからだ。あの「水伝騒動」は、ごく最初の頃を除いて「疑似科学批判」の本筋を離れた争いになったのだが、批判を受けた側のブログが初動を誤らなければ、あのように多くのブログを巻き込んで騒動が泥沼化することもなかった。

今回の件も、正直言って城内実の気持ちも全くわからないではない。城内が「眞鍋さんの許可をもらっている」という連絡を受けていたことはほぼ確実であり、だからこそ「なんで今頃『無断使用』だなんて言い出すんだ」と思ったに違いない。しかし、そこで立ち止まって冷静沈着な行動ができるかどうかが、政治家としての資質の有無を決定する。傍から見ていると、眞鍋さんが自身のブランドになっているブログであそこまではっきり書く以上、城内はポスターを撤去せざるを得なくなることは火を見るより明らかであり、私はおそらく城内はいったん「調査中」というコメントを出した上で、眞鍋さんに謝意を表明してポスターを撤去するんだろうな、と予想していた。しかし城内は初動を誤り、結局仲介者の社長に泥をかぶらせる形での事態の収拾を図ったが、それを報じる側が「眞鍋かをり写真使用は無断じゃなかった」などという見出しをつけて煽った影響もあったためか、眞鍋さんの所属する事務所が態度を硬化させてしまい、選挙ポスターへの掲載許可などしていないと反論を受ける羽目になって今に至っている。最初に城内が適切に対処しておけばどうってことなかったのに、初動を誤ったばかりに話をこじらせてしまったのである。

「2ちゃんねる世論」に右往左往した人たちから、当ブログも「管理人はなに感情的になってるんだ」、「報道を鵜呑みにして城内氏を卑劣漢呼ばわりしたお前こそ卑劣だ」、「先走って城内実を批判したことを謝罪すべきだ」等々の批判を受けた。だが、眞鍋さんの所属する事務所が反論したことにより、(デイリースポーツの)報道を鵜呑みにして感情的に城内を擁護したのは彼らの方であることが明らかになった。面白いことに、「水伝騒動」で最初に批判を受けたブログも、この件に関するエントリを上げ、デイリースポーツの記事をそっくり引用した上で(要はデイリーの報道を鵜呑みにして)、さあ真相は明らかになったぞ、間違った時はちゃんと謝れよ、と嬉しそうに書いており、城内実やその後援者に援護射撃したつもりらしいが、逆に足を引っ張る羽目に陥っている。さらに面白いのは、当該エントリに「水伝騒動」の火に油を注いだコメンテーターがコメントしていることだ。まったく懲りない人たちであり、彼らは騒動からいったい何を学んだのだろうかと思ってしまう(この記事は「号外記事なので後で消します」とのことだから、誰か魚拓をとったほうが良いかもw。あほらしいから私はやりませんけど)。

城内実ポスター問題に戻ると、初動を誤った城内実がとった対応(実質的にはそう言って良いだろう)を見て私が思ったのは、「ああ、城内実というのはやっぱり権力者なんだなあ」ということだ。どういうわけか、リベラル・左派系ブログの一部およびその読者たちの間には、平沼赳夫や城内実は「反新自由主義」や「反自公」の闘士であるという誤解が広く見られるが、城内実は4年前にはコイズミ新自由主義政権における重臣だった安倍晋三の腹心であり、権力の中枢にいた人物である。それなのになぜ失脚したかというと、これは安倍晋三の完全な読み違いで、城内が勇ましく郵政民営化に反対した理由の一つは、安倍が城内を世に売り出すに当たってこの件を利用しようとしたからだと私は考えている。恐らく安倍には「俺の懐刀の城内実なら、少々の火遊びは大目に見てもらえる」という読みがあったのだろうが、コイズミはそんな甘い男ではなかった(筆者が『kojitakenの日記』に書いた記事「「信念を貫く男」城内実の過去の行動」を参照されたい)。

さて、デイリースポーツの「飛ばし記事」についた「はてなブックマーク」に、kmiuraさん(『kom's log』の管理人・三浦さん)が下記のコメントを書かれている。

kmiura 真鍋自身が事務所に確認済みって早々に書いているではないか。どちらが権力を持っているのか考えれば、この一日の間に圧力ないし工作があったと考えるのが妥当。/id:rna これは人格権というか選挙権の問題ではないか 2009/08/01


そう、この件を考察するに当たって、権力の所在の問題を見逃してはならないと思う。城内実には、芸能プロダクション(や、もしかしたらそれにつながっている勢力)を動かすことのできる権力がある。さすがは権勢を誇ったコイズミ政権の中枢近くにいた男だ。一方、眞鍋かをりさんには、大人気を誇るブログの訴求力はあるが、権力は何もない。これを考えると、『玄倉川の岸辺』が真鍋さんの行動を勇敢だとして賞賛しているのはよく理解でき、納得できる。だが、世間一般には権力者に弱く、流されやすい人が大半を占める。だから、デイリースポーツが「無断使用ではなかった」と書いたら、容易にその流れに乗りたがる。「寄らば大樹の陰」的な発想である。

まことに光栄なことに、上記の優れた論者である三浦さんから当ブログにコメントをいただいたので紹介したい。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-963.html#comment6691

古寺多見さま

この件、とても自分の琴線に触れるなあ、となんとなく思っていたのですが、さきほどこれは選挙権の問題だと思い当りました。すなわち、眞鍋さん個人は選挙の自由がある。で眞鍋さんが私はあなたを支持しないと城内氏に明言している状況で、城内氏はあなたの事務所はOKだしたではないか、と城内さんが反論している。事務所はそのような許可はしていない、と言明したことがついさきほど判明しましたが、これはともかくそれ以前の城内さんの態度はすでに私の心をぶるぶるゆさぶりました。というのも、城内氏においては雇用関係が、議会制民主主義における選挙権に先行している、すなわち眞鍋さんは選挙において事務所の奴隷という先見なのです。この部分に腹が立っているのだ、と判明した瞬間に、なるほど、これに腹がたっていたんだ、と思いました(すなわち城内氏の内面化された部分の排外主義、選民主義につながった)。もしよかったら考察に加えてください。

おくればせながら、昨年、ベスト記事に選んでいただきありがとうございました。なによりの光栄です。

三浦
2009.08.02 08:26 kmiura


これまた鋭い指摘である。この件で眞鍋かをりさんを擁護し、城内実を批判しているブログは、前記『玄倉川の岸辺』や当ブログのほかにもいくつかあるが、共通しているのは、眞鍋さんがブログに書いた文面を重視し、いくら事務所が認めたといっても眞鍋さんは認めていないではないか、デイリースポーツの報道は眞鍋さんのブログと整合しないではないかなどとこだわっていることだ。ところが、デイリーの記事についた前述の「はてなブックマーク」を見ても、三浦さんが指摘する

「雇用関係が、議会制民主主義における選挙権に先行している、すなわち眞鍋さんは選挙において事務所の奴隷という先見」

を持った城内実の発想と類似するコメントが結構見られる。perfectspellさんと仰る方が、

タレントの政治信条はタレント個人のものでなく事務所が所有してる と考えてる歯車多いな。

と、皮肉たっぷりに書いている通りである。そういえば、「水伝騒動」でも初期の頃、批判を受けたブログは周囲のお仲間のブロガーたちと「鉄の結束」を固めて対処に当たろうとしたが、幸か不幸かブロガーには城内実のような権力は持ち合わせていないので、そのもくろみはあえなく潰えてしまった。このあたり、リアルの政界と比較して、ネットの世界はより本来的な意味での新自由主義的な世界だといえる。アクセスカウンターのほか、ブログランキングだとかウェブ(ブログ)スカウターだとかブログ拍手だとかソーシャルブックマークの件数などなど、ありとあらゆる指標でブログは市場の評価にさらされるのである。それらの中でもっとも操作が容易なのはブログランキングであり、だからこそブログランキングの順位を吊り上げることに血道を上げるブログが多い。

またまた話がそれてしまったが、三浦さんのコメントに話を戻すと、三浦さんは、「眞鍋さんは選挙において事務所の奴隷という先見」は、「城内氏の内面化された部分の排外主義、選民主義」につながるものであり、だからこそ三浦さんは城内実氏に腹が立ったのだ、と思い当たったとのことだ。

やっと本日のエントリの核心部分に行き着いた。三浦さんの指摘は、一見全く無関係に思われた「国政法改正」をめぐる城内実の醜悪な言説と、今回の城内実が眞鍋かをりさんの写真を選挙ポスターに無断使用したとされる事件との隠れた連関を発見した、実にすぐれた考察だと私は考える。このような示唆に富んだコメントをお寄せいただいた三浦さんに深く感謝する次第である。当ブログとしては、城内実のポスター問題をメインに据えたエントリは、本エントリをもって打ち止めにしたいと考えているが、騒動が変なもつれ方をした場合にはこの限りではない。

最後に、私が昨年のあらゆるブログ記事の中でナンバーワンに選んだ『kom's log』のエントリ「ボクタチの闘争」に再度リンクを張り、私からのせめてもの返礼としたいと思う。
http://d.hatena.ne.jp/kmiura/20081027#p1


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