ロシア側の思惑も見え隠れするモスクワ郊外で開かれた航空ショーを取材しました。
先日、モスクワ郊外で開かれた国際航空宇宙ショーで、ロシア側は、最新鋭戦闘機のコックピットを日本の駐在武官にも開放したが、そのおうようさには、したたかな計算が込められているようです。
ロシアの首都モスクワの郊外で先週、モスクワ国際航空宇宙ショーが開催された。
旧ソ連時代から名をはせた戦闘機の最新バージョンが、その性能を誇示するように大空を舞った。
「Su-30」の機動性は、アメリカの「F-15」をしのぐとされている。
スホーイ社は、ミグ社とともに軍事大国・旧ソ連を支えてきた戦闘機メーカー。
そんなスホーイ社が満を持して発表したのは、なんと旅客機だった。
「Su-100・スーパージェット」。快適な空の旅を約束するかのような、清潔感にあふれる明るい機内。
この機体は、西側民間企業との完全コラボレーションプロジェクトで、設計はスホーイだが、西側企業も重要な部分を担当している。
コンサルタントは、かつての敵、アメリカの企業。
パイロットは「わたしたちの飛行機は、他社より新しく経済的で、精巧です」と話した。
すでに、数カ国から引き合いが来ているという。
世界の旅客機市場に打って出た、老舗軍事企業の「トランスフォーム(変身)」。
得意の戦闘機でも、市場拡大を目指すのだろうか。
軍事評論家の岡部 いさく氏は「ロシアの工業輸出の花形は、航空機なんです。西側市場にさらに食いこもうと、西側のいろいろな企業と手を組んでいるんですね。しかし、ロシアの戦闘機輸出は、アジアの軍事力バランスに大きな影響を与えつつあるんです」と話した。
旧ソ連が崩壊した1990年代、ロシアは、当時の最新鋭機「Su-27」、「Su-30」を中国に輸出した。
中国は現在、あわせて260機以上を所有している。
岡部氏は「中国軍がSu-27やSu-30の配備を進めていることで、日本と中国の航空戦力のバランスは、質・量ともに中国の方に傾きつつあるんです。そこに、さらにロシアが最新鋭機を売り込もうとしているわけですから、これは日本としても気になりますよね」と話した。
ロシアの最新鋭戦闘機「Su-35」は、まもなくロシア空軍に配備されるという。
Su-35の大きな機体は俊敏に動き回り、加速力・上昇力も目覚ましく、性能の高さを見せつける。
プーチン首相も納得の様子で、「将来を担う民間機、軍用機が集まりました。例えば、『第4世代+』。多目的戦闘機のような多目的戦闘機です」と述べた。
「世代」は、第2次世界大戦でジェット戦闘機が初めて登場してからの進化を表している。
Su-35は「第4世代プラス」、つまり、航空自衛隊の主力戦闘機「F-15J」よりも、性能で勝るということになる。
イギリスの軍事専門誌によれば、ロシア兵器輸出機構の幹部は、中国へSu-35の輸出を打診中だと報じている。
中国に輸出されれば、アジアの軍事バランスが変化することは間違いない。
一方、日本にはどんな選択肢があるのか。
この航空ショーに、日本人の姿があった。
Su-35のコックピットに乗るのは、河野雅治駐ロシア大使で、最新の軍事技術を目のあたりにしていた。
液晶タッチパネルを採用し、スイッチも操縦かんにまとめるなど、操作性が配慮された最新鋭戦闘機のコックピット。
ロシアが日本大使を乗せ、さらに自衛隊出身の防衛駐在官に写真撮影を許可したことについて、岡部氏は「民主主義国家としての情報公開なのか、それとも日本へ売り込みを図りたいのか、いろいろ考えられますよね。しかし、中国の戦闘機が第4世代プラスへと進化するようなことになれば、日本のF-15Jの改修でいつまで対応できるのか、とても心配なところです。航空自衛隊は、次期戦闘機『F-X』に、アメリカの世界最新・最強といわれる第5世代、『F-22』の導入を強く望んできました。しかしアメリカのゲーツ国防長官は、F-22の生産を打ち切ろうとしていて、日本が導入できる見通しは小さくなっていますよね。この航空自衛隊の次期戦闘機F-Xをどうするのか、これは衆院選後の新政権にとって、安全保障上の大きな課題になってくるんじゃないでしょうか」と話した。
(08/27 00:39)