社説
二大政党化/重み増す「第三の選択肢」
衆院選は、自民、民主両党を軸とした「政権選択」に焦点が絞られつつある。公示をあさってに控え、ほかの政党が何を訴え、新政権にどう臨もうとしているのか、あらためて耳を澄ますことも大切だ。
自民党は公明党との連立与党で過半数を目指し、民主党は社民党、国民新党との連立を視野に選挙協力を進める。政権党だけでなく、そのパートナーを選ぶ選挙でもあり、各党は連立の枠組みと共通公約を明確にして審判に臨むのが筋だろう。
公明は、自民との与党共通公約で、受給資格の最低加入期間を25年から10年に短縮する年金対策や政治資金規正法の制裁強化など、もともと主張していた独自の具体策を盛り込み、存在感を示す。
しかし、自民と連立を組んだ10年間で格差は拡大し、社会保障のほころびも放置できないところまできた。与党として進めた小泉改革路線をどう評価し、「平和と福祉」の党としての理念をどこまで実現したのか。連立10年の総括も聞きたい。
野党3党も、共通公約を公表した。
社民党が重視する製造業派遣の原則禁止や障害者自立支援法の廃止、国民新党が党是とする郵政民営化の抜本的見直しなどを柱に据える一方、3党間で隔たりの大きい外交・安全保障政策の言及は避けた。
社民党はマニフェスト(政権公約)で「新しい連立政権を目指す中で基本政策を実現」と明記した。しかし、かつての自社さ政権で自衛隊容認などの方針転換を重ね、「護憲」の主張がぼやけて議席を減らした苦い経験がある。改憲派が少なくない民主との連立でも、いずれぶつかる壁だろう。
国民新党は「政権にはすり寄らない」としており、独自色を強めて影響力を行使する狙いのようだ。
野党共闘と一線を画す共産党は「建設的野党」を宣言。民主政権が誕生すれば、後期高齢者医療制度の廃止など一致できる政策には協力するという。従来の絶対的野党から現実路線に一歩踏み込み、政権交代を党勢拡大につなげる試みといえる。
このほか、先日結成されたみんなの党や改革クラブ、新党日本などが政界再編も視野に議席獲得を目指す。
小選挙区制度で二大政党化が進むほど、二者択一に収まらない多様な意見をくむ「第三の選択肢」は重みを増す。その旗をしっかり掲げ、存在価値をアピールできるか。自、民以外の政党の踏ん張りが日本の議会制民主主義の在り方を左右する。
(8/16 11:10)
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