【カイロ和田浩明】イラクのイスラム教シーア派政党イラク・イスラム最高評議会(SIIC)は24日、新会派「イラク国民同盟」を結成したと発表した。マリキ首相が率いるアッダワ党は参加しておらず、シーア派最大会派だった「統一イラク同盟」は分裂した。来年1月に予定される連邦議会選挙に向けた主導権争いが表面化したことで、首相の政権運営にも影響が出そうだ。
SIICがアッダワ党と分裂した最大の動機は、議会選挙後の「次期首相」の人選を巡り、アッダワ党党首のマリキ首相の再選に反対している事情が大きいと見られる。
バグダッド大学のアブドル・ジャバー・アハメド教授(政治学)はアッダワ党が新会派に加わらなかった理由を「首相再指名の要求が拒否されたため」と解説する。
新会派には反米強硬派サドル師派などが参加。SIICは「一部のスンニ派政治家も参加しており、宗派主義ではなく、国民的勢力だ」と主張している。
ただし、SIICの指導者ハキム師は肺がんのためイランで治療中。指導力を発揮するのは困難な状況。このため、SIICの担当者は毎日新聞の取材に「主要勢力のアッダワ党には、新会派への参加を期待する。指導者を巡る意見の相違は大きくない」とも語り、妥協の余地はあり得るとの認識を示した。
しかし、新会派はイランの影響が強く、連邦国家を志向している勢力の集まりで、「イラク国家主義」を掲げ、中央集権化を進めるマリキ首相の路線とは相いれない。
イラクでは首都バグダッドをはじめ各地で大規模テロが相次ぎ、現政権の治安対策への批判も強まっている。今回の分裂で、マリキ首相の求心力がさらに低下する可能性もある。
毎日新聞 2009年8月25日 21時08分(最終更新 8月25日 21時18分)