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クローズアップ2009:衆院選、終盤戦へ

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 毎日新聞など報道各社の衆院選情勢調査で民主党の圧倒的な優勢が伝えられる中で迎えた23日の「選挙サンデー」。麻生太郎首相(自民党総裁)は街頭演説の重点を民主党批判に置いて形勢逆転を狙うとともに、従来の支持基盤をつなぎ留めようと「保守政党」を懸命にアピール。「政権」が近づいた民主党の鳩山由紀夫代表は現政権を「官僚依存」と批判する一方、マニフェスト(政権公約)の実行を繰り返し訴えることで政権交代への期待を高める演説手法を継続している。【山田夢留、影山哲也】

 ◇鳩山代表、「公約実行」に重点

 「今回の選挙はただ単に自民党政権から民主党政権に変えるという小さな話ではない。大きな歴史的転換だ」

 鳩山氏は23日夕、東京都品川区で、現実味を増してきた政権交代の意義を訴えた。

 「脱官僚」による政権システムの抜本改革を掲げる民主党。官僚の天下りなどによる無駄遣いをなくすことがそのまま子ども手当など独自政策の財源捻出(ねんしゅつ)につながるだけに、鳩山氏は「長期政権にあぐらをかいた自民党。優秀な官僚もあぐらをかいた」と指摘した。

 ただ、「次期首相」へ向けた鳩山氏の演説内容は単なる「官僚批判」ではなく、官僚を味方につけることを前提に「与党の官僚依存体質に対する批判」という形にシフトしてきている。この日も「先ほど『官僚批判されるとつらい。私の息子は官僚だ』という人がいた」とのエピソードを紹介。「つらい思いをさせて申し訳ない。決して彼らが悪いのではない。使いこなせない政権与党が間違っている」と強調した。

 鳩山氏は公示以降、民主党批判に徹する麻生首相を意識し「批判合戦ではなく政策論争を」とマニフェストの実行に訴えの重点を置いてきた。この日は、民主党の年金政策と子ども手当を中心とした少子化対策の説明に時間を割き「(子ども手当は)決してバラマキではない。皆さん方の未来のための種まきだ」とアピールした。

 報道各社の情勢調査で候補者や支持者に「大勝」ムードが広がるのを警戒し、引き締めを図る必要性にも言及。「メディアでは、民主党圧勝ではないかと報じられている」と指摘したうえで「『私一人が別に応援しなくてもいいんじゃないか』という気持ちが油断になったら大変危険だ」と強調し、「選挙はまだ1週間先だ」と聴衆に呼び掛けた。

 ◇麻生首相、「保守層」引き留め

 首相の街頭演説で最も時間が割かれるのが、「政権交代」を訴える民主党への批判だ。23日の演説でもテンションを上げ、北朝鮮の貨物検査法案やソマリア沖の海賊対処法に反対した同党に「日本の安全保障を任せるわけにはいかない」と指摘。子ども手当などに対するバラマキ批判も毎回のように登場する。

 また、米国との自由貿易協定(FTA)交渉を促進するとした同党のマニフェストについて「締結したら、北海道の農畜産業は壊滅的になる」(札幌市内で19日)などと、遊説先の特色に合わせて批判も変化させる力の入れようだ。

 次いで重視しているのは、景気対策に取り組んできた政権与党の実績アピール。景気対策は「道半ば」だとして選挙後も継続したいと訴える。「民主党との一番の違い」として自民党マニフェストには経済の成長戦略があるとも主張するが、その中身に触れることはほとんどない。

 「おわび」から入るスタイルは、地方遊説を始めた1日以降継続している。ただ、内容は自身の「失言」と自民党総裁選をめぐる党内の混乱への陳謝から、18日の公示後は格差やひずみを「率直に認め反省する」に変化した。小泉構造改革路線からの脱却を鮮明にすることで、痛みを受けた人を取り込む意図とみられる。

 一方、演説の最後に必ず強調しているのが「自民党は保守政党」とのフレーズ。「守るべきは皆さん方の家族、郷土、日の丸。日本という国を守らなければならない」と訴える。無党派層の多くが民主支持に傾く中、従来の支持基盤である保守層は何としてもつなぎ留めたいとの思いがにじむ。

 演説の手応えについて首相は21日、記者団に「聴衆の反応は悪くない。立ち止まってじっと最後まで聞いている人の数が多い」と語った。23日の報道番組でも「流れは変わってきていると思う」と述べ、反転攻勢は可能だとの認識を強調。しかし、報道各社の情勢調査について問われると「厳しい」と本音ものぞかせた。

毎日新聞 2009年8月24日 東京朝刊

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