鳥取

　◇「アンケート２・医師不足」

　地方の医師不足が叫ばれる中、県内でも医師不足の深刻な現状が顕在化しつつある。鳥取市立病院では昨年９月末、小児科が休止した。勤務していた小児科医は２人。「負担が重い」として２人とも市内の県立中央病院に集約化され、休診に追い込まれた。

　これは氷山の一角だ。米子市の鳥取大付属病院では２月、過大な負担を理由に救急医４人全員が辞職を表明。倉吉市の県立厚生病院では４人いた産科医が次々と辞め、２人になる見込みという。前田迪郎院長は「これじゃふるさとで出産できない」と嘆く。

　０４年に始まった臨床研修制度では研修医が病院を選べる。都市部の病院が人気を集め、地方の病院は深刻な医師不足に陥ったとされる。県は奨学金制度を拡充するなどして医師確保に懸命だが、抜本的な改善には至っていない。

　子育て世代から高齢者まで地域医療に対する不安が高まっている。地域医療崩壊を食い止めるため、どのような政策を考えているのか、各候補者に聞いた。【宇多川はるか】（掲載は届け出順）

　◆１区

　◇細川幸宏氏（４０）＝諸新

　公立病院のほとんどが赤字で、医療費は増える一方である。病院に「経営の思想」を取り入れて黒字化を図る。また、大企業や民間病院から経営指導を受け、医療従事者を適正に配置し、低料金の医療や深夜営業の病院など多様な地域医療サービスを実現して患者のニーズに応える。予防医学や健康知識の普及や啓もう、ストレス・ケアの充実が必要である。

　◇石破茂氏（５２）＝自前

　医学部定員の増員に即効性はないため、看護師、介護師、薬剤師、助産師などの力を有機的に最大限活用するための法整備が必要。産科・救急・へき地の医師手当への財政支援、短時間正規雇用制度の導入、地域医療再生基金による都道府県単位の地域医師確保策の充実等を行いつつ、ナースプラクティショナー（一定の診療行為ができる看護師）等も検討すべきだ。自然増が当然見込まれる医療、福祉支出については、消費税を含む税制の抜本改革が不可避と考える。

　◇奥田保明氏（４９）＝民新

　自公政権の社会保障費２２００億円の抑制方針を撤廃する。医学部定員を１・５倍化し、看護師養成数も大幅に増やす。救急、産科、小児科、外科等の医療提供体制を再建するため地域医療計画を見直し、必要な支援を行う。妊婦、患者、医療者が安心して出産、治療に臨めるよう、無過失保障制度を全分野に広げ、公的制度として設立する。自治体における保健師の採用を増やし、健診受診率の向上など地域の保健活動、予防医療を推進する。

　◇岩永尚之氏（５２）＝共新

　医師数が先進国で最低レベルにあることが医師不足の根本にある。医学部の入学定員を１・５倍化し、労働条件改善で看護師２００万人体制を確立する。薬・医療機器に偏った診療報酬のあり方の見直し、医療従事者の労働を適正に評価するなど診療報酬の改革を進める。産科、小児科、救急医療など不採算部門やへき地医療を担う公的医療機関の統廃合や民営化はやめ、地域医療の拠点として国の支援を強める。

　◆２区

　◇甲谷英生氏（３３）＝諸新

　８４年以降、医学部定員が７％減らされたことが、医師不足の原因の一つになった。定員数を医師不足が解消されると思われる水準まで増員する。また女性医師が育児、子育てと仕事を両立できる職場環境の確立も必要。さらにインド人医師などの導入により安価で高品質の医療をもたらすことができる。ドクターヘリなどの導入により過疎地域でも安心して暮らせる体制づくりをする。

　◇湯原俊二氏（４６）＝民新

　差別的な後期高齢者医療制度は廃止する。医師、看護師不足の原因は、勤務医の過酷な勤務実態と臨床研修制度にあり、増員と同制度の改善を図る。また勤務医が行う診断書などの事務を分担する医療事務員の導入を支援することなどにより地方の医師不足を解消し、救急、産科、小児などの医療提供体制を再建する。被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来は地域保健として一元的運用を図る。

　◇赤沢亮正氏（４８）＝自前

　医師数を増やすため医学部定員を過去最高の８４８６人に増員した。産科、救急、へき地などの医師手当への財政支援、医師不足地域に医師を派遣する病院への財政支援を行う。女性医師のため院内保育所の整備をするなど、離職防止、復帰支援などを進める。生死にかかわる第３次救急医療施設に３０分以内で到達できるよう「いのちの道」の早期整備を行う。