|
中部発 トップ | 中部経済 | IT社会 | 教育・文化 | 環境・生活 | 防災 | 健康・医療 | スポーツ | 企画・特集 |
天気 | 地図 | ショッピング | 雑誌 | 交通 | 映画 | 写真 | 動画 | データベース | サイト案内 |
医療 激務 産科医不足に拍車 ――09衆院選 争点の現場(3 )「安心して産めない」妊婦を診察する野村さん。平日は外来診察、土日も入院患者の回診が欠かせない(三重県尾鷲市で)=田口詠子撮影
三重県尾鷲市立尾鷲総合病院の産婦人科医、野村浩史さん(52)は、病院近くのアパートに帰宅した後も、常に携帯電話を手元に置く。緊急呼び出しに備え、緊張した時間を過ごすが、それでも帰宅出来た日は、「ホッとします」。帰れずに、病院に泊まらざるを得ない日は、月に7〜10日にもなる。 市内でただ一人の産婦人科医。受け持つ患者のエリアは、県南部の東紀州地域2市2町に及ぶ。土日や祝日も入院患者の回診をするため、三重県伊勢市の自宅に戻れるのは、別の開業医が当直に入る月に一度だけだ。 三重大から医師の派遣を受けていた同病院の産婦人科は2005年7月、大学医局の医師不足を理由に約40キロ離れた公立紀南病院(三重県御浜町)に統合され、尾鷲市は一時、常駐産科医がいない状態になった。 野村さんが単身で赴任してから3年。3日続けて帰宅できなかったことも一度や二度ではない。「ある程度の拘束は仕方ないが、体力面で不安はある」。産科医がもう一人いてくれれば、というのが野村さんの偽らざる思いだ。 ◎ 「代わりを探してはいるけど、なかなか見つからないんですよ」 名古屋市立大の杉浦真弓教授(48)(産婦人科)は昨夏から、愛知県豊川市の市民病院に派遣する産科医を探し続けている。当時の院長からひざ詰めで医師探しを依頼されたが、ない袖は振れない。今も医師が見つかるメドは全くたたない。 同病院では今年1月、家庭の事情で産婦人科の医師が1人減り、3人となった。06年から近くの新城市民病院(愛知県新城市)の診療体制縮小で、同病院からの流入患者が増加していたこともあり、昨夏以降、受け入れる出産患者を制限する状態が続いている。 ところが、医師の供給源となるべき大学側は今、医局の人手不足という悩みを抱えている。04年度から始まった臨床研修制度により、研修医が病院を自由に選べるようになった結果、大学に残る医師の数が減ったためだ。このことが、地域医療機関の医師不足を招いているとの指摘は多い。 女性産科医が、子育てとの両立が難しいなどの理由で定年前に引退してしまうケースが多いのも、産科医不足に拍車をかけている。杉浦教授は「学生に産科医の魅力を伝え、女性が長く働ける環境をつくっていくことも必要だ」と訴える。 ◎ 日本の人口1000人当たりの医師数は2・1人。経済協力開発機構(OECD)加盟30か国の平均(3・1人)を大きく下回る。中でも、激務で訴訟リスクも高いとされる産科医は、この10年で約10%も減少した。愛知県内では、35公立病院のうち、昨年6月現在、19病院が医師不足で時間外救急患者の受け入れ制限や入院診療休止など診療を制限せざるを得なくなっている。 尾鷲市で産科医が常駐しない期間に長女を妊娠した同市の主婦(39)は、車で片道2時間かけて三重県松阪市の病院に通った。「胎児に異変が起きたらと考えると、安定期に入るまでは不安で仕方がなかった」。医師不足、そして診療体制の縮小は、地域住民の生命や生活を脅かす。 定年まで今の生活を続ける意思を固めたという野村さんは強調する。「安心してお産ができるという当たり前のことを実現するためには、何よりもまず、医師不足の解消が急務。これがすべての根源ですよ」 (小栗靖彦、田口詠子) 自民、民主以外の各党も医師の増員を掲げるほか、公明は院内保育所の整備など女性医師の復職支援、共産は国公立病院など公的医療機関への支援強化を打ち出している。社民は地域に助産院などの分娩施設を増やすとしている。後期高齢者医療制度については、民主、共産、社民が廃止、自民、公明は現行制度の枠組みを維持したうえでの改善、見直しを掲げる。 (2009年8月22日 読売新聞)
|
トピックス
読者・投稿中部のイベントリンク |
会社案内|
サイトポリシー|
個人情報|
著作権|
リンクポリシー|
お問い合わせ| YOMIURI ONLINE広告ガイド| 新聞広告ガイド| 気流・時事川柳(東京本社版)への投稿| 見出し、記事、写真の無断転載を禁じます Copyright © The Yomiuri Shimbun. |