福岡大学病院で転移がんとの検査結果を見落とされ、治療機会を逃したなどとして、福岡市の女性患者(52歳で死亡)の夫と母が病院を設置する同大学に約5600万円の損害賠償を求めた訴訟の和解協議が21日、福岡地裁(増田隆久裁判長)であった。大学側が原告の遺族側に1300万円を支払うことなどで和解が成立した。
原告側の弁護士によると、和解条項の中で大学側は▽検査結果誤認で2年以上にわたって治療機会を失わせた▽治療法に関する情報提供に不適切な点があった--などとして、謝罪。そのうえで再発防止策を講じることなどを約束している。
提訴は07年7月。訴えによると、女性は03年12月、首の腫れに気づき受診。病理検査では転移がんを示す結果も出たが主治医は良性と判断。しかし、約2年3カ月後の06年3月の再検査で転移性頸部(けいぶ)リンパ節がんと診断された。化学療法を行ったが、抗がん剤の副作用による間質性肺炎で同7月に死亡した。
遺族側は▽誤診なく治療を受けられていれば長期生存も期待できた▽化学療法のみを勧め、余命を自分らしく生きるための選択肢を示されなかった--などと主張していた。女性の夫は「なぜ単純なミスを犯したのか。当たり前のことを当たり前にやってほしい」と話した。【和田武士】
毎日新聞 2009年8月21日 西部夕刊