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審判の夏:’09しずおか衆院選 争点の現場を歩く 医師不足 /静岡

 ◇「すぐ増やして」声切実 住民の危機感強く

 牧之原市の農業の男性(62)の妻(58)が突然、自宅で倒れた。4月1日午後10時半だった。「妻は、どの病院に運ばれるんですか」。男性がこう尋ねると、駆け付けた救急隊員が答えた。「島田です」。車で約1時間かかる島田市の病院に向かうと告げられた。

 牧之原市内の榛原総合病院なら車で約5分だった。ところが、この日から救急患者受け入れ制限を始めたのだ。救急車が島田市民病院に着いたのは午後11時半を回ったころだった。

 妻は脳卒中だった。後遺症で今も入院している。「榛原総合病院に運べていたら……」。男性はそう話す。

 急患の受け入れを制限せざるを得なくなった原因は、医師不足だ。年初に49人いた医師は今、37人。内科や脳神経外科の常勤医は今いない。牧之原市、吉田町の救急患者の多くが、車で約1時間かかる島田市や藤枝市、焼津市の病院に運ばれる事態が続く。

 医師不足は04年に始まった「新臨床研修制度」も要因だ。この制度導入で、自治体が運営する病院に派遣していた医大が派遣医を引き揚げ始めたのだ。

 医師不足は病院経営も揺さぶる。患者数が減ったためだ。榛原総合病院を運営してきた牧之原市の西原茂樹市長は「このままでは市が財政破綻(はたん)する」と訴え、民営化への転換を決断したが、引き受け手は決まっていない。

 住民の危機感は強い。市民団体「榛原総合病院と地域医療を守る会」(岩本孝之会長)は13日、1万1291人の署名を添え、医師確保の支援を県に迫った。「自民党も民主党もマニフェストで医師を増やすと掲げるが、すぐ実現してほしい」。会員で牧之原市静波の無職、加藤吉平さん(82)の声は切実だ。

 ◇      ◇

 伊豆半島南部地域(下田市など1市5町)は、産婦人科医不足が深刻になっている。地域の年間出生数は約450人。だが、産婦人科医は実質的に下田市の開業医、臼井文男医師(51)だけだ。

 地域の1市5町で構成する共立湊病院組合(南伊豆町)は17日、新指定管理者を医療法人・聖勝会に決めた。石井直樹下田市長が期待するのは「産婦人科医確保に努力すると聞いている」からだ。だが、11年4月開院の「新湊病院」の予定診療科に産婦人科はない。聖勝会の「努力」も開院後だ。

 臼井医師は「産婦人科医不足は医療訴訟が多いことが要因。国には専門家が医療ミスを審議する第三者機関を設置するなど対策をしてほしい」と話した。【中村隆、浜中慎哉】

毎日新聞 2009年8月21日 地方版

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