水俣病未認定患者を救済する特別措置法が8日成立したのを受け反対、賛成の患者団体が東京都内でそれぞれ会見した。救済範囲を拡大し、95年に次ぐ「第2の政治決着」となった。しかし反対派は、法に盛り込まれた原因企業チッソの分社化について「加害企業が責任を免れる」などと批判。賛成派も救済内容が具体化していないことに注文を付けた。
救済法で対象となる症状には、手足の先ほどしびれが強い「四肢末梢(まっしょう)優位の感覚障害」に、全身性の感覚障害など四つの症状が加えられた。またチッソを患者補償会社(親会社)と事業会社(子会社)に分け、子会社の株式売却益を補償に充てる。ただし、対象者に支払われる一時金の額はまだ決まっていない。
裁判を通じた解決を求めてきた患者団体「水俣病被害者互助会」(熊本県水俣市)の佐藤英樹会長は「チッソ救済法だ。被害者が反対の声をあげている中で成立したのは本当に残念」と批判。「水俣病不知火患者会」(同)の大石利生会長も「見かけで分からなくても、神経症状のある患者はまだたくさんいる」と全体像を明らかにする必要性を強調した。さらに「新潟水俣病阿賀野患者会」(新潟市)の山崎昭正会長も「これからが我々の闘いだ。九州の被害者と手を携え、司法の場で争う」と述べた。
このほかノンフィクション作家の柳田邦男さんらは「加害企業が全被害者の補償を行わないうちに、法律によって免責させることがあってはならない。解決と幕引きはまったく違う」などとした緊急抗議声明を発表した。
一方、法案成立を求めてきた「水俣病出水の会」(鹿児島県出水市)の尾上利夫会長は「長い長い闘いだった。95年には救済されず、悔しい思いをしてきた。高齢化する患者がようやく救われる。早急に施行してほしい」と力を込めた。同席した保田行雄弁護士は「救済内容が決まっていない。患者の意見を聞きながら政治レベルで解決のプロセスを進めてほしい」と訴えた。【足立旬子、下桐実雅子】
毎日新聞 2009年7月8日 22時48分(最終更新 7月8日 23時55分)