[東京 18日 ロイター] 第45回衆院選が18日公示され、30日投開票に向けた真夏の選挙戦が正式にスタートした。自民党と公明党の現連立政権の維持か、民主党を中心とした野党による新政権の誕生か、4年ぶりの衆院選は事実上の「政権選択選挙」となる。
自民党は「責任力」をキャッチフレーズに政権担当能力の高さを強調する一方、民主党は官僚主導政治からの脱却を掲げて「チェンジ」を訴え、解散から総選挙まで40日間という異例の長期選挙戦は、いよいよ終盤戦を迎えた。
衆院選は、小泉純一郎首相(当時)が「郵政民営化」の是非を争点に掲げて歴史的大勝を果たした2005年9月以来。小選挙区300、比例代表180の計480議席を争う。
主要政党の解散時議席数は自民党303、公明党31、民主党112、共産党9、社民党7、国民新党5。定数の3分の2を超える334議席を有する自民・公明の連立与党は、前哨戦とされた7月の東京都議選で自民党が大敗。与党内では「強い逆風が吹いている」(幹部)との危機感が広がる中、獲得議席目標を与党で過半数の241まで切り下げ、政権の維持を訴えている。対する民主党は、これまでの報道機関の世論調査において優勢が伝えられているが、陣営の緩みを警戒しつつ、単独過半数の獲得で政権交代実現を狙う。
昨秋のリーマン・ブラザーズの経営破たんに端を発した世界的な金融・経済危機を受けて急速に悪化した日本経済だが、政府やその他の主要国が打ち出した経済対策の効果や企業の在庫調整の進展などで、足元では回復基調が明らかになっている。麻生太郎首相(自民党総裁)は、選挙戦で一連の経済対策の成果を訴えるとともに、雇用情勢などが依然として厳しい状況にある中、引き続き「景気対策最優先」を掲げて巻き返しを図る。
自民党はマニフェスト(政権公約)に、景気対策への重点投資を継続することで「2010年度後半には年率2%の経済成長を実現する」ことを明記。3年間で40─60兆円の需要を創出し、概ね200万人の雇用を確保することを盛り込んだ。景気回復後には、消費税率引き上げを含めた税制抜本改革を行うことも明確にした。
一方、民主党は子ども手当の創設や高速道路無料化、ガソリン税などの暫定税率の廃止という家計を直接的に支援する政策を並べ、資源配分の大胆な変更で内需主導型経済の実現をめざす。これら政策の実施には4年目に16.8兆円程度の財源が必要になるが、一般会計や特別会計の予算の見直し・組み替え、いわゆる「霞が関埋蔵金」の活用、租税特別措置の見直しなどでねん出する方針。
首相直属の「国家戦略局」を設置して政治主導で予算の骨格を策定することも表明しており、民主党が政権を獲得した場合、政策決定のプロセスも大きく変化することになる。
消費税については、鳩山由紀夫代表が4年間は引き上げない方針を表明しており、選挙後の連立を展望する社民党と国民新党との共通政策においても税率据え置きを明記した。
自民・公明の連立与党と民主党のいずれも過半数に達しない場合は、少数政党の発言力が増し、選挙後に誕生する政権の組み合わせや政策に影響が出ることになる。各党の獲得議席の割合によっては、政局が流動化し、政界再編の動きにつながる可能性も出てくる。
(ロイターニュース 伊藤 純夫)