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宮城の記者の目:衆院選 現場が求める政治 「国や社会の将来像示せ」 /宮城

 ◇広い視野に立ち説明を

 県民の暮らしを支える農漁業、雇用、医療の現場は今、政治に何を求めているのか。争点を浮き彫りにする取材で当事者たちを尋ねると「国や社会の将来像を示してほしい」との言葉が返ってきた。候補者には政策の説明だけではなく、「個別の政策はどのような社会を目指すためにあるのか」という広い視野に立った説明も求めたい。

 「医者にも生活がある」。医師不足に苦しむ登米市内の市立病院に勤務する男性の医師(50)は過酷な勤務状態を嘆いた。救急外来を受け持つ当直の日は、ほとんど仮眠できずに翌日の診療を行うこともある。地域医療は24時間態勢で重症患者を見守る勤務医が、休日を犠牲にして支えているのが現状だ。

 市立病院は夜7時以降、熱湯が出ない。ボイラー技士が帰宅するためだ。「当直中に風呂に入れない所に女性医師が勤務するのか」。男性医師は診療報酬改定で年収を上げるより、女性が働きやすい環境を整える方が先決と主張する。欧米と異なり、日本では女性医師が子育てで医療現場から離れる。「まずはボイラー設備や託児所の充実が大事」との言葉には説得力がある。

 港町・気仙沼は漁師の後継者不足や漁価低迷で活気が失われつつあった。今春のマグロ漁船の国際減船で入港数や水揚げが先細りすることも追い打ちをかけている。県は減船対策の補助金支出を決めたが、漁業関係者の表情はさえなかった。

 遠洋漁船の元漁労長男性(62)は「自動車や情報技術(IT)だけで日本は持つのか」と訴えた。安い外国産の輸入攻勢を受けているだけに、貿易交渉が工業製品の輸出に比重を置いているとの思いもある。男性は「漁業の生産額は微々たるものかもしれないが、食生活を支えている」と語った。

 今回の衆院選は公示前から前哨戦が繰り広げられ、各政党の集会で他党の批判を何度も聞いた。建設的な批判なら良いが、政権獲得を巡る党利党略のための批判ならば有権者のためにはならない。限られた財源で日本はこれから何に力を入れていくべきか。私は国の方向性を示す演説を聞きたい。【比嘉洋】

毎日新聞 2009年8月19日 地方版

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