【平壌、北京共同】北朝鮮の朝鮮中央通信によると、金正日総書記は16日、訪朝している韓国の玄貞恩・現代グループ会長と会談、昼食も共にした。会談を踏まえ、北朝鮮のアジア太平洋平和委員会と現代グループは17日、南北の陸路往来の正常化や、金剛山と開城の観光再開、離散家族再会など5項目の交流措置に合意したことを盛り込んだ共同報道文を同通信を通じて発表した。
玄会長は17日、軍事境界線に近い韓国側の「南北出入事務所」で記者会見し、金総書記が金剛山観光中断の原因となった昨年7月の韓国人観光客射殺事件の再発防止を約束、観光事業など南北経済協力事業の正常化に意欲を見せたことを明らかにした。玄会長は同日午後、陸路韓国に戻った。
金総書記が韓国の政財界要人と会談したことが伝えられるのは、李明博政権では初めて。合意が実行に移されれば、李政権の発足で悪化した南北関係は修復に向かうことになる。
北朝鮮には、南北経済協力の再開を通じ、李大統領に対北朝鮮政策の見直しを迫ると同時に、クリントン元米大統領が促した韓国との関係改善の姿勢を米側に示す狙いもあるとみられる。核やミサイル問題で強化された制裁包囲網を、南北関係を利用して突き崩そうとの思惑もありそうだ。
合意したのは(1)昨年12月から統制を強化していた陸路を通じた南北往来を原状回復(2)金剛山観光を早期に再開、北朝鮮は便宜と安全を徹底して保障(3)開城観光を直ちに再開、開城工業団地事業を活性化(4)白頭山観光の推進(5)10月の秋夕(中秋節=今年は3日)に金剛山で離散家族再会を実施―の5項目。
報道文はまた「双方は2000年の南北共同宣言と07年の南北首脳宣言に沿って協力事業を発展させる意思を表明した」とした。
韓国統一省の千海成報道官は17日、現代グループと北朝鮮側の合意を「肯定的に評価する」と言明した。一方で「あくまで民間レベルの合意だ」と強調。南北当局間の具体的な合意が必要だとし、北朝鮮側に政府レベルの協議を求めていく考えを示した。韓国側は金剛山での離散家族再会を最優先に取り組む方針。
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