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鳩山・民主代表:東アジア共同体構想 「脱靖国」図る民主 国立追悼施設検討

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 政治>

 首相就任後は靖国神社に参拝しない考えを示す民主党の鳩山由紀夫代表が、新たな国立追悼施設の設置を検討する方針を打ち出している。靖国参拝でナショナリズムを高揚させて保守層の支持を得ようとすることもあった自民党政権から、「脱ナショナリズム」への転換を目指す鳩山氏の「東アジア共同体構想」が鮮明になった形だ。靖国参拝を支持する自民党議員からは反発の声が上がった。【田所柳子、野口武則、山田夢留】

 鳩山氏の「東アジア共同体構想」は長期的に、安全保障分野では「北東アジア非核化構想」の、経済分野では「アジア共通通貨」の実現を目指す。そのためには韓国、中国などとの信頼関係が不可欠だ。両国との間に横たわる歴史認識問題の解決は安全保障、経済と「三位一体」の関係と位置付けている。そこでこの問題の解決に向けて鳩山氏が掲げるのが国立追悼施設だ。

 「A級戦犯が合祀(ごうし)され、靖国に行くべきでないという方々もいる状況なので、国立追悼施設に党として取り組んでいく」。鳩山氏は15日、新潟県長岡市の記者会見でこう語った。11日は外国プレスとの記者会見で「過去の日本の行為を見つめる勇気を持ちながら未来志向で臨む意志は、他の政党に負けない」と自民党との違いを強調した。

 鳩山氏の代表としての初外遊は韓国だった。李明博(イミョンバク)大統領と会談し、「一番大事なのはナショナリズムのとりこにならないことだ」と訴えた。

 鳩山氏は、強固な日韓関係をもとに米中両国と北朝鮮問題の解決に取り組む戦略を描く。その延長線上にあるのが「北東アジア非核化」だ。日本、韓国、北朝鮮が核を保持せず、米中露がその3カ国へ核を用いないことを保証する構想だ。鳩山氏周辺は「靖国不参拝など歴史認識問題と、東アジア共同体構想はセットだ」と語る。

 ◇自民保守派に危機感 参拝、閣僚は野田氏のみ

 鳩山氏が追悼施設の設置を打ち出したことに、15日に靖国参拝した自民党議員は批判の声を上げた。ただ、靖国参拝を同党の運動方針に掲げているものの、06年の小泉純一郎元首相以来、首相の参拝もなく、運動は手詰まり状態だ。保守派は「靖国神社が形骸(けいがい)化する」と危機感を募らせている。

 「そういう施設を造るのは無意味だ。祈りをささげるなら靖国に来るのではないか」

 超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」会長の島村宜伸・自民党総裁特別補佐は参拝後の記者会見で語り、追悼施設に不満を示した。私人として、現役閣僚でただ一人参拝した野田聖子消費者行政担当相も「単純に何か違うものを造ればいいという簡単な話ではない」と、慎重な姿勢を示した。

 同会によると、この日、小泉純一郎、安倍晋三両元首相を含め計44人(前衆院議員31人、参院議員13人)が参拝。衆院選の公示を18日に控え、昨年の56人(衆院43人、参院13人)を大幅に下回った。

 一方で、新たな追悼施設の設置には超党派で賛同議員がいる。02年に福田康夫官房長官(当時)の私的懇談会が建設を提言し、山崎拓前副総裁らが中心の超党派議連も06年に同様の報告書をまとめた。公明党は小泉政権で調査費を予算に盛り込むよう求め、共産、社民両党も賛同している。このため民主党政権となれば、自民党に多い「追悼施設反対派」は少数となる。

 日本遺族会会長の古賀誠・自民党選対本部長代理は参拝後、記者団に「追悼施設とかいう議論が出てくるからこそ、早くすべての国民がわだかまることなくお参りできる靖国神社にしたい」と語り、A級戦犯分祀の必要性を強調して危機感をあらわにした。

 民主党議員で集団参拝したのは羽田雄一郎、芝博一、前田武志の3参院議員。羽田氏は記者団に「天皇陛下も含めて心安らかに参拝できる施設を造る方針は正しい」と述べ、靖国神社と追悼施設は矛盾しないとの考えを示した。

毎日新聞 2009年8月16日 東京朝刊

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