日本空間情報技術という飯田市にある会社が破産手続きに入ったという報道は、地元信濃毎日新聞の第1社会面を2日続けて彩った。旧社名ジャステックというこの会社は、近ごろはめっきり
GISにのめっていた。報道で旧社名を併記するほど旧社名時代の伸びによって現在の地位を築いていたということなのだろうが、まだ現社名になってから長い歴史がない。旧社名を併記しているが、この会社の旧社名というと、ジャステックよりもさらに前の信濃写真工房という名のほうが、わたしには印象深い。もともとは今のようなコンピューター処理が一般化する以前の時代、大判の写真コピーや編集という部分を担っていた。設計図がキャドで書かれるようになる以前の、いわゆるアナログ時代、手書き時代のコピーが主な仕事だったように思う。
その後測量部門に手を広め、公共事業の右肩上がり時代に後発ではあったが規模拡大を進めていった。ところが我が社もそうだが、長野県の財政難に合わせたようにそうした仕事は激減。加えてこうした委託業務の入札率は50%近いところまで落ち込み、かつての倍の仕事を行なわないと前と同じ収入を得られない状態になっていった。そんななか、この会社はGISに県内の会社ではいち早く手をかけ、独自のGISのシステムを構築していった。独自のものだから開発費に多大な投資をしたに違いない。今から3、4年前のまだジャステック時代のことであるが、給与の支払いが滞っているなんていう噂をあちこちで聞いた。当時から大丈夫なんだろうか、なんていう雰囲気があったが、いずれにしてもすでにGIS主体の業務に転換していた時期なのだろう。
2/2の信濃毎日新聞朝刊によれば、GISのシステム保守をどうしたらよいかと、この会社のシステムを導入した自治体が困惑しているようだ。お膝元の飯田市や豊丘村のほか、長野市もそのシステムを導入していたことを知った。世の中はこうした情報技術の部門でさまざまなシステムが氾濫している。そうしたシステムがたとえばマイクロソフトのOSのようにかなりの部分で汎用化している場合はまだしも、さらなる専門的なシステムに依存している場合は、その後の管理をどうしていくか、という部分で複雑な問題が多いことを示している。お役所ごと導入するシステムは異なるし、その導入に際してその後のシステム更新をどう継続してゆくかという部分は、導入段階での大きなポイントとなる。いざ導入先が破産するという現実を見て、我が社でも同様なシステムの提供をしようとしているが、果たして我が社は未来永劫継続するかは怪しい。営業は一種の詐欺のようなものだ。話術の上手いやつは仕事をとってくる。しかし、大雑把にいえば詐欺師のようなものだ。そこで会話された内容がどれほど正確かは、当事者のみのわかるところだ。そういう意味では、もともとわたしには怪しいイメージのあったこの会社のシステムを導入した自治体は、どこまでこの会社の姿を把握していたのだろうか。
まったくもって中央で同じことをしている会社が、長野県のような場所で同じ仕事をしても見合う収入はない。それほどもの作りではない世界の仕事は複雑化しているし、対価が正当なのかどうかも解りづらくなっている。
ところで、外国労働者に働かせる、あるいは外国にもの作りの場を求めていった原点に、対価の安い場所としての地方がそうでなくなったことがある。もともと地方とは、中央にとっての後進国だったわけだ。コストを下げる目的がその目的を達せられなくなって外国へ流れ出た。その先も対価が上がってゆかない補償はない。とはいえ、だからといって地方は中央にとっての後進国という位置関係はいまだにかわらない。きっと中国並みの労働対価で働く地域が日本に現れたら、その地域に一流企業は工場を設置するのだろう。工場誘致したいのなら、労働対価を押さえた地域システムを作る、そんな時代がやってくるのかもしれない。いや、すでにそういうことになっていて、わたしが知らないだけなのか・・・。
Comment (
0) | Trackback (
2)