野球　１６年夏季五輪復活ならず…改善点多く

北京五輪・野球３位決定戦で米国に惨敗し、深々とスタンドに頭を下げる日本代表・星野仙一監督（左）らナイン
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　国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）は１３日、ドイツ・ベルリンで理事会を行い、１６年夏季五輪で行う競技としてゴルフと７人制ラグビーの２競技を推薦した。１２年ロンドン五輪で除外された野球、ソフトボールの復帰はならず、２０年五輪以降の復活を目指すことになった。

　ＩＯＣのジャック・ロゲ会長は会見で「野球とソフトボールに関しては特別な議論はなかった」とし、両競技の復活がならなかったのは既定路線だったことを示唆した。野球が議論の対象にすらならなかったのは、大リーガーの五輪出場の可能性が少ないことが背景にある。スター選手が出場すれば、大きな関心を呼び、ばく大な放送権料も見込める。事実、同会長は昨年「（大リーガー出場が復活への）大きなファクター」と明言していた。スター選手が出場しない以上、野球復活の芽もなかった。

　０７年、国際野球連盟（ＩＢＡＦ）の会長に就任したハービー・シラー氏はＭＬＢのセリグ・コミッショナーに五輪への選手参加を要請。一方で、０８年北京五輪では試合時間短縮の目的でタイブレーク制を導入した。また競技期間を５日間に短縮する案も示すなど、大リーガー出場が容易となる環境づくりを目指したが遅きに失した。ＷＢＣと五輪の両輪を野球振興や市場拡大の「ツール」とする方針にシフトチェンジしたＭＬＢだが、全球団が合意したわけではない。課題のドーピング対策も遅れている。

　一方、日本でも楽天・田中、早大・斎藤が復活をアピールするプロモーションビデオを製作するなどしたが、世界に訴えかけるインパクトには欠けた。またプロ側は、アマ側に年間１５００万円の活動資金を提供しているが、いわゆる「ロビー活動」は皆無に近かった。皮肉なことにＷＢＣで連覇を果たしたことが、五輪での復活を願う機運をそいだという側面もあった。

　≪韓国も「打撃」≫昨夏北京五輪で金メダルを獲得した韓国も“野球落選”に無念さをにじませた。聯合通信（電子版）によると、韓国野球委員会（ＫＢＯ）李相一事務総長は「五輪はＷＢＣとは異なる性格を持つ世界最高のスポーツ祭典だ。野球の底辺拡大に相当な打撃を受ける」と話した。さらに「兪栄九総裁が７月にセリグ・コミッショナーとも会談していただけに残念だ」と、大リーグの非協力姿勢を指摘した。

　▼巨人・長嶋終身名誉監督　１６年大会での五輪復帰を願ってきただけに、残念でなりません。しかし、野球の素晴らしさを世界の人々に理解してもらうためにも、今後も球界を挙げて五輪復帰に向けた活動を続けていく必要があると感じています。

　▼ソフトバンク・王会長　再度オリンピック種目にという強い気持ちで皆が取り組んでいただけに残念でなりません。ただ野球振興や国際的な普及という取り組みには終わりはありません。野球関係者のみならず、ファンの皆さんとともに競技復活の実現に向けて努力をしていきたい。

　▼阪神・星野仙一ＳＤ（北京五輪日本代表監督）　野球をやっている子供たちの夢を大人が壊してしまった。子供たちに何か良い策を考えないといけない。世界に野球を広めるために米国と日本が除外について検証する必要がある。

　▼日本野球機構・長谷川一雄事務局長　１６年五輪がシカゴや東京で開催される場合には、公開競技の形でも野球を実施して、将来の復活に向けて野球の魅力をアピールできるように活動を続けたい。

　▼日本野球連盟・松田昌士会長　日本の野球界としても最大限の努力をしてきたが、理解が得られず誠に残念。野球競技の世界的な普及と振興を目指して、関係諸国との連携を図り、今後も引き続き努力する。

　▼国際野球連盟・シラー会長　野球は泣かない。これから先を見ていくだけだ。大リーガーの参加を促し、ドーピング問題を解決したい。

　▼全日本アマチュア野球連盟、日本学生野球協会・松前達郎会長　世界の野球界が一丸となって野球復活をＩＯＣに訴えたが、不成功に終わり極めて遺憾です。今回の敗因をよく分析し、野球が世界的に発展する対策を講じたい。

　☆０８年北京五輪出場組

　▼ヤクルト・宮本　プロが出るとか、アマが出るとかは関係なく、野球ファンとしては（五輪に野球が）あった方がいい。なくなるのは寂しい。

　▼中日・岩瀬　五輪という世界規模イベントで野球がないのは寂しい。もっと世界に認知してもらいたいですし、そういう意味では復活してほしいですね。

　▼楽天・田中　残念ですね。少しでも可能性があるならば（将来的に）復活してほしい。

　▼西武・中島　五輪は独特な雰囲気がある。もともとはアマチュアの大会。なくなったら、アマチュアの方々の目標がなくなるんじゃないですかね。

　▼西武・潮崎投手コーチ（８８年ソウル五輪で銀メダル）野球人としては五輪はあった方がいい。アマチュアにとっては目標になる大会。その目標となる大会がなくなるということは寂しいこと。