力なく両拳を突き上げ、フラフラになりながら、小野寺は王座防衛を告げる判定のコールを聞いた。激しい打撃戦に一歩も引かず、王者として受けて立ち、「相手は気持ちが強いし、パンチもあった。自分の中で何度も倒れそうになった」と本音をもらした。
3回、右フックでダウンを奪いながら、その後は苦戦。4月の王座奪取から4カ月間で、消化したスパーリングは、ジムの方針でわずか7回だった。実戦感覚が希薄になったことに加え、試合直前に風邪をひいてしまい、コンディションは最悪。それでも、執念でベルトを死守した。
初防衛を果たしたばかりだが、気の早い渡辺治会長は「日本で大きな試合をしたい」と世界5階級制覇王者のスター、マニー・パッキャオ(30)=フィリピン=との壮大な夢対決を思い描く。2代目洋介山は「まだまだ弱いので、これから練習して、もっと自分を磨きたい」と、弟子は謙虚にうつむいた。(伊藤隆)