【産業】「ガラパゴス化」する日本

現在、研究開発、精算、販売などあらゆる領域で企業活動のグローバル化が進んでいます。一方で、良い技術や多種な機能を誇りながらも、海外では存在感を示すことができない製品・サービスも多く見受けられます。

技術やサービスなどが日本市場で独自の進化をとげて、世界標準からかけ離れてしまうという現象が起こっています。このような現象は、生物の世界でいうガラパゴス諸島における現象にたとえられて「ガラパゴス化」といわれています。

1億人超の市場をうまく活用して産業発展をとげてきた一方で、日本特有の商慣行や独自の機能にこだわりのある消費者により、海外とは異なる独特の市場が作られてきました。このような日本市場の異質性は、生物の世界でいうガラパゴス諸島の現象に例えられます。

南米から900キロ離れた太平洋上の沖合いにあるガラパゴス諸島には、諸島内で独自の進化をとげた固有の生物が数多く存在します。それらは、ガラパゴス諸島が大陸からは隔絶された環境にあったことによって、他の環境から影響を受けなかったため、独自の進化を遂げたと言われており、ダーウィンが進化論のアイデアを得た場所としても有名です。
近年の日本では、技術やサービスで独自の進化をとげることにより、世界の標準からかけ離れてしまう現象が見られています。日本の技術、サービスはまさにガラパゴス化現象が生じているといえそうです。世界最高水準の技術を活かし、海外企業では真似のできないような機能を盛り込んだ製品を持ちながら、世界市場ではほとんどシェアを握れないケースも少なくありません。このような「ガラパゴス化現象」は、日本企業が抱える大きな問題となっています。


日本におけるガラパゴス化現象
日本の「ガラパゴス化現象」を、段階を追って整理してみると、以下の特徴がありそうです。
(1) 高度なニーズに基づいた製品・サービスの市場が日本国内に存在する
(2) 一方、海外では、日本国内とは異なる品質や機能要求水準の低い市場が存在する
(3) 日本国内の市場が高い要求に基づいた独自の進化をとげている間に、海外では要求水準の低いレベルで事実上の標準的な仕様が決まり、拡大発展していく
(4) 気がついた時には、日本は世界の動き(世界標準)から大きく取り残されている
下表は、日本市場でガラパゴス化現象の進展が危惧されている分野の一例です。


日本のガラパゴス化現象の例をあげると…

競争から共生へ
日本ではますます人口が減少することが見込まれています。このような社会の中でガラパゴス化現象が進展することは、日本経済に深刻な影響を及ぼすでしょう。国内市場の成長が見込めない産業においては、いかに「ガラパゴス化現象」から脱却するかが重要なことは言うまでもありません。
ガラパゴス化現象から脱却するためには、今まで海外に対してあまりにもかたく閉ざしてきた門戸を世界に対して開き、また自らも世界に積極的に出て行くことが必要です。また競争に打ち勝つという考えではなく、世界と「共生」していくという思想も重要でしょう。世界の変化・多様化を日本の発展に結び付けるような振る舞いが求められています。

参考:『2015年の日本』(東洋経済新報社)
掲載日:2008/02/13
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