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少年への特別暴行陵虐容疑 広島少年院元首席専門官逮捕

2009年8月11日16時57分

 広島地検は11日、広島少年院(広島県東広島市)の元首席専門官で、奈良少年院次長の向井義(ただし)容疑者(47)=奈良市秋篠町=を特別公務員暴行陵虐の疑いで逮捕し、発表した。地検によると、向井容疑者は広島少年院では法務教官を統括する立場で、矯正教育の実績が高い評価を受けていたが、自ら在院の少年らに暴行を加えていたという。広島少年院で同容疑で逮捕された教官は5人目となった。

 地検によると、向井容疑者の逮捕容疑は、05年9月ごろ、当時16歳の少年の首にシーツを巻き付けて自分で絞めさせたうえ、遺書を書くように言い、さらにポリ袋内で洗剤を混ぜて発生させた有毒なガスを少年に吸わせようとするなどした疑い。

 向井容疑者は調べに対して容疑を否認し「洗剤を使ったことは認めるが、他はあまり覚えていない」と話しているという。地検は奈良少年院や向井容疑者の自宅を家宅捜索した。

 地検などによると、向井容疑者は、05年4月から07年3月にかけて広島少年院に勤務。教官を統括するほか、指導方針を決定する権限をもっていた。向井容疑者は規律に違反した少年がいた場合、他の少年にもグラウンドを走らせるなどして責任を取らせる「連帯責任制」を導入。こうした方針と、退院した少年の再入院率の低さが評価され、同少年院は当時、「全国の模範」と評された。こうした矯正教育のあり方に注目したジャーナリストの取材も受け、関連する書籍が何冊も出版されるなどした。

 すでに特別公務員暴行陵虐罪で起訴されている教官の野畑勝也容疑者(32)の代理人弁護士らによると、野畑容疑者は犯行について「向井容疑者の厳しい指導方法を見習って指導してきた」「向井容疑者が異動してから院内が荒れたので、少年に規律を守らせるために暴行した」などと説明しているという。同様に起訴された教官の田原克剛容疑者(43)も地検の調べに「向井容疑者が暴行をしたと聞いたので自分もやった」と話しているという。

 向井容疑者の逮捕を受け、尾崎道明・法務省矯正局長は「国民の皆様の矯正行政に対する信用を著しく損なうもので誠に遺憾です。今後も、調査を進め、適切に対処したい」とコメントした。

 地検は11日、すでに同罪で起訴された法務教官のうち野畑容疑者を含む3人を別の少年に対しても暴行していたとして、広島地裁に追起訴した。向井容疑者を含む5人の教官が関与したとして逮捕・起訴された暴行件数は在院少年計26人に対し計43件となった。

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