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停戦の陰で:グルジア紛争1年/中 南オセチア 復興資金9割頼り

 ◇強まるロシア依存

 砲弾で破壊された跡が残る5階建て住宅のベランダに洗濯物が干され、中庭で幼い子供たちが自転車を乗り回して遊んでいた。

 「ようやく修復が始まった。次の冬は凍えずに済みそうだよ」。4階に住む主婦のラズィヤツさん(64)が笑顔を見せた。南オセチアの中心都市ツヒンバリ。昨年グルジア軍に攻撃された時は地下に隠れ、冬は窓にビニールを張ってしのいだという。紛争直後はロシア軍が小麦粉やジャガイモを無料配布。ロシア政府から1人あたり2万ルーブル(約6万円)の補償金も支給された。最近始まった住宅の修復もロシアの無償支援だ。「ロシアの助けがなければ一人も生き残れなかった」と何度も繰り返した。

 南オセチア独立派政府のプリエフ第1副首相(47)によると、今年の国家予算28億ルーブル(約84億円)に対し、ロシア政府の支援は約3倍の85億ルーブル。他にロシアの自治体からの支援も含めると復興資金の9割以上をロシアに依存する。郊外にはモスクワ市の資金で住宅、学校、幼稚園などを整備する新市街地、通称「モスクワ地区」の建設が進む。

 昨年までグルジア経由ルートに依存していたガス供給も、ロシア政府系ガスプロムが75%を出資する「南オセチア・ガスプロム」がロシアからの直送パイプラインの建設を急ピッチで進めている。8月末にツヒンバリまで完成する予定で、南オセチアの約7割に供給される。さらに東部まで延伸し、3~4年で全面的にロシアからの直接供給に切り替える計画という。

 住民の9割以上がロシアのパスポートを持つ「二重国籍」で、06年の住民投票では95%以上の住民がロシアへの編入を支持した。最大3800人のロシア軍も駐留する。産業基盤の乏しい中で今後、ロシアへの依存度が一層強まるのは確実だ。ココイティ大統領は3日、首相を更迭し、後任にロシアの建設会社社長を任命した。7月にツヒンバリを訪れたメドベージェフ露大統領が復興の遅れに不満を漏らしたため、これに迅速に反応したとみられている。

 郊外の養鶏農家ザリーナさん(49)は「ロシアの政権が代わったらどうなるか。それだけが心配」とつぶやいた。【ツヒンバリで大木俊治】

毎日新聞 2009年8月8日 東京朝刊

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