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【国際】

アラブ3家族60人 家接収 ユダヤ人入居 東エルサレム 新たな火種

2009年8月11日 朝刊

9日、東エルサレムのイスラエル当局に接収された自宅そばで、路上生活を続けるハヌーンさん一家ら=内田康撮影

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 【エルサレム=内田康】東エルサレムのアラブ人三家族の計六十人余が今月上旬、イスラエル当局に自宅を接収され、路上生活を強いられている。家には代わってユダヤ人入植者団体が入居した。東エルサレムはパレスチナ自治政府が将来の独立国家の首都と想定する係争地域。中東和平を仲介する国連や欧米も接収に反発し、新たな火種になっている。

 「家に戻るまで、ここで暮らし続ける」

 電気工ハヌーンさん(50)は自宅そばの路上で語った。今月二日に追い出されて以来、弟家族らを含む一家十七人は路上の木陰で生活する。マットレスを敷いて寝て、トイレは近所で借りる。「ユダヤ人は、エルサレムからアラブ人を追い出すつもりなのだ」

 東エルサレムは第三次中東戦争(一九六七年)を経て、イスラエルがヨルダンから併合した。ハヌーンさんらが住む地域は併合前、ヨルダン政府が国連に土地を提供。五六年に難民用住宅が建設され、四八年のイスラエル建国以降、難民となっていたハヌーンさん一家らが住み始めた。

 一方でユダヤ人入植者団体は、二十世紀初頭まで続いたオスマン帝国(現トルコ)領時代からの所有権を主張。イスラエルの裁判所がこれを認めた。接収済みは三軒だが、計約五百人が住む近くの二十五軒も同じ運命にあるという。

 接収について、クリントン米国務長官が「(中東和平に)挑発的」と語ったほか、欧州連合(EU)も「国際法に反する」と懸念を表明している。

 

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