【エルサレム前田英司】ロシアのプーチン首相は6日、トルコの首都アンカラを訪問してエルドアン首相と会談し、ロシアが推進する欧州向けの天然ガス輸送パイプライン「サウス・ストリーム」計画の建設協力で合意、署名を交わした。欧州向け天然ガス供給の独占体制を維持したいロシアと、地域の資源集積地として影響力を高めたいトルコの思惑が合致した。
「サウス」計画は、ロシアから黒海を通ってブルガリアやオーストリア、ギリシャなどへ向かうライン。ロシアは来年までに建設を始め、15年の稼働開始を目指している。
黒海のパイプライン敷設を巡っては、ロシアと確執を抱えるウクライナが、自国水域での敷設を許可しないのではないかとの懸念があり、黒海対岸のトルコの協力取り付けは、ルートを確保する上で重要だった。
一方、トルコは東西を結ぶ「資源回廊」になることを狙っている。アンカラでは7月、別の欧州向け天然ガス輸送パイプライン「ナブッコ」計画を進める多国間協定も結ばれ、トルコはこれにも参加している。
「ナブッコ」は、天然ガス需要のロシア依存を軽減したい欧州連合(EU)が主導する計画で、本来なら「サウス」と競合するが、トルコは二つの計画をてんびんに掛け、単なるパイプラインの「通過国」にとどまらず、エネルギー安全保障上の国際的影響力を高めようとしている。
AP通信によると、プーチン首相は記者会見で、「サウス」計画の意義を「(天然ガス供給の)基盤整備が進むほど欧州向けのエネルギー供給は安定する」と強調。エルドアン首相も「将来的には依然、欧州向け供給は十分とは言えない」と重要性を指摘した。
署名には、「サウス」計画に参加するイタリアのベルルスコーニ首相も同席した。
毎日新聞 2009年8月7日 10時51分(最終更新 8月7日 13時05分)