松本市里山辺のブドウ畑で果汁を吸うカブトムシ【27面】 |
県内有数のブドウ産地・松本市里山辺で、出荷を控えたデラウエアに大量のカブトムシが集まり、果汁が吸われてしまう被害が発生している。一部の畑では7月下旬から毎朝数十匹が見つかり、専門家は「聞いたことがない」とびっくり。子どもたちには人気のカブトムシが“害虫”になる事態に有効な対策は見当たらず、地元の松本ハイランド農協も困惑している。
4日早朝、里山辺の山際にある上金井地区の農業男性(78)のブドウ畑。何匹ものカブトムシがデラウエアの皮を破り、実に頭を突っ込んで汁を吸っていた。中には雄、雌2匹が一つの実に取り付く姿も。被害に遭った房は食べられた部分が無残に崩れ、売り物にならない状態だ。この朝、男性が捕まえたカブトムシは約30匹に上った。
男性によると、約5アールの畑でカブトムシがブドウにたかるようになったのは7月26日。最初に捕ったのは15匹だったが、翌日は約30匹、次の日は約80匹…。畑の3分の1ほどで毎日捕獲が続き、「50年ブドウを作っているが、こんなことは初めて。3日から出荷だったのに…」と嘆く。
地元農家によると、同地区ではほかに二つの畑で被害が出ているといい、近くの男性(64)のデラウエア畑でも4日朝、15匹を捕まえた。
カブトムシなど甲虫類に詳しい日本甲虫学会会員の平沢伴明(はんめい)さん(52)=安曇野市=は「落果し、発酵した果実にカブトムシが引き寄せられることはあるが、(木になっている)フレッシュな果実を餌にする例は聞いたことがない」と驚く。
地元住民によると、付近の山に例年と違う状況はみられないというが、平沢さんは「おがくずの山やたい肥場などが近くにあり、異常発生で個体数が増え、餌を求めてブドウ畑にきたと考えられる」と推測している。
捕獲したカブトムシの一部は地元公民館などに提供、夏休みの親子イベントで子どもたちに配られるなどして喜ばれているが、被害を受ける農家たちは複雑な表情。松本ハイランド農協山辺・営農生活課長の上条道弘さん(51)は「畑全体をネットで覆う方法があるが、出荷前に急にそんな経費は掛けられない。無事な実を一日も早く出荷するしか手がない」と話している。