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<試算>
公務員の勤務中喫煙の
損害額は2兆円超!


青山貞一
 aoyama@eritokyo.jp
武蔵工業大学環境情報学部教授(環境政策論)

掲載月日:2008年12月19日 無断転載禁

◆神奈川県庁では勤務中喫煙を1日2本に制限

 受動喫煙防止条例の制定を勧めている神奈川県では、「隗より始めよ」として、県庁職員の勤務中の喫煙を午前、午後一本ずつに制限する措置をとった。以下はそれに関連する神奈川新聞の記事。

勤務中の県職員喫煙は2本まで/県が制限

神奈川新聞

 県は十七日までに、勤務中の職員の喫煙を午前、午後の一本ずつに制限する措置をとった。本庁のほか出先機関の職員を含めた約七千九百人が対象。県民感情などに配慮した上での決定だが、喫煙者の肩身は狭くなる一方のようだ。

 県人事課によると、これまで勤務時間中の喫煙については所属長に断ればよく、本数の制限もしていなかった。しかし、「喫煙で席を離れることが多いと県民の不信を招く。

 仕事の効率面やたばこを吸わない職員との公平性の点からも何らかの制限が必要」(同課)と判断。三日に開催された庁内の総務課長会議で本数を二本に制限するよう伝達したという。

 本庁で働く職員約三千二百人の喫煙率は18%で、全国平均より8ポイントほど低い。県の施設内は喫煙できないが、屋外なら敷地内でも喫煙できる。

 県は来年の県議会二月定例会で公共的施設での受動喫煙防止のための条例成立を目指している。

2008年12月17日19時0分配信 

 企業、役所など組織を問わず、勤務中の喫煙は、喫煙、受動喫煙の有害性とともに、頻繁に喫煙所に行き時間を浪費すること=税金の無駄遣いとなる。

 勤務中の喫煙は、実質、「その間、仕事をしていない」のは明白である。しかし、従来これを正面から問題とする動きはなかった。

 私が在籍する大学でも頻繁に喫煙所に行き、喫煙している専任教員がいる。当然、その間は各種の業務が止まる。


◆喫煙は間違いなく仕事の効率を下げる

 この問題に対し、昔から「一服することで発想の転換が図れる」とか、「気分が転換できる」などという、喫煙者の言い分が出されている。

 だが、この言い分は本当だろうか?

 そもそも数時間に1本程度ならまだしも、ヘビースモーカーは、20〜30分に一本など、頻繁に喫煙しているのが実態である。

 そんな中、統計調査ではないがヤフーがインターネットを使ったリアルタイムの調査をしている。下が現時点での結果である。現時点では64%のひとが勤務中の喫煙は「仕事の効率があがらない」と回答している。もちろん、インターネット調査なので、統計上の有意性はないが、おそらく当然の結果であろう。

 以下のグラフは投票がある度に、時々刻々数字が変化してゆきます。


出典:ヤフーWeb



◆公務員の勤務時間中の喫煙は監査請求・住民訴訟の対象ではないのか?


 まして
公務員の勤務中の喫煙は税金、公金の不正支出に類する行為であり、住民監査請求、住民訴訟の対象となっても不思議ではない。喫煙職員の年間総喫煙時間×職員報酬の時間単価は相当な額にのぼるのではないか?

 今の改悪された地方自治法による住民訴訟では、ここの職員への損害賠償請求が困難となったが、喫煙職員全体を対象に訴訟を提起することは意味がある。

神奈川県の場合

 以下を仮定する

基礎データ

 ・全職員数      7,900人
 ・喫煙職員(本庁)  3,200人×18%= 576
 ・喫煙職員(本庁外) 4,700人×25%=1,175
  筆者が長野県に特別職、地方公務員で在職していたとき
  の経験から現業部門の方が喫煙率が高いことを考慮
 ・一人が勤務時間中に一日15本を吸うと仮定(平均は20%)
    
一人一日の喫煙本数については、厚生労働省の以下の調査を
     参考にした。いずれも11本から20本が全体の50近くを占めている。
     平成10年度調査平成16年度調査  

 ・1本の喫煙につき最低10分かかると仮定
    
1本喫煙すyのに要する時間は5分から7分であるが、
    
職場から分煙施設まで歩く時間(往復)も含めた。
 ・平均時給を管理職から一般職員平均4,596円
   (ボーナスを含め)と仮定
 ・年間勤務日数:250日を仮定


 
◆年間総損失額の試算

  576人×4,596円/時間×(10分×15本)/60分×250日
  =
16.5億円/年

  1,175人×4,596円/時間×(10分×15本)/60分×250日
  =
33.8億円/年

 試算の結果、何と年間で
50.3億円にも達することが分かった。

 おそらく喫煙所設置費、換気のためのペンチレーター設備とその電気代、清掃費、受動喫煙関連費を含めるとさらに多くの損失となることは間違いない。


全公務員の場合

 これを国(霞ヶ関、地方整備局など)、全国都道府県、政令指定都市、市町村、国立公立機関(大学、独立行政法人、公社公団、病院など)に当てはめると、年間トンデモない損失になるだろう!

<基礎データ>

 ・全職員数     平成17年度  国 95万人、地方 304万人

 地方公務員 28.5兆円(304.2万人)平成16年度
  平均時給4,595.6円/時
  ※年間2040時間労働
  年間の祝日15日と有給10日を差し引き
  平日は1日8時間、土曜日は隔週で4時間労働とする 

  国家公務員 8.6兆円(94.6万人)平成17年度
  ※独法0.7兆円、郵政公社2.4兆円等を含む
  うち行政機関 3.3兆円 33.2万人 平均4,457.3円/時
  ※年間2230.8時間労働
  週平均42.9時間×52週間

  ただし、議員系は含まれない。あくまで行政職(特別、一般)

 ・喫煙職員      平均20%と仮定
 ・一人が勤務時間中に一日15本を吸うと仮定(平均は20%)
    一人一日の喫煙本数については、厚生労働省の以下の調査を
     参考にした。いずれも11本から20本が全体の50近くを占めている。
     平成10年度調査平成16年度調査  

 ・1本の喫煙につき最低10分かかると仮定
    1本喫煙すうのに要する時間は5分から7分であるが、
    
職場から分煙施設まで歩く時間(往復)も含めた。

 出典:総人件費改革の現状と取組(中馬弘毅臨時議員配布資料)
 http://www.gyoukaku.go.jp/soujinkenhi/pdf/180427_daijin2.pdf

 そこで行政系の全公務員の平均喫煙率を20%と仮定した場合、年間の公金損失額は、次のように計算される。

 地方公務員
  304万人×0.2×4,596円/時間×
  (10分×15本)/60分×250日=
1兆7,465億円

 国家公務員
  95万人×0.2×4,457円/時間×
  (10分×15本)/60分×280日=
5,928億円

 
何と、約2兆3,393億円と試算された!
 総人件費の6.3%にも及ぶ驚くべき数字である。



全公務員の場合
 (ただし国家公務員平成17年度データより日本郵政公社職員を除く)


 これを国(霞ヶ関、地方整備局など)、全国都道府県、政令指定都市、市町村、国立公立機関(大学、独立行政法人、公社公団、病院など)に当てはめると、年間トンデモない損失になるだろう!

<基礎データ>

 ・全職員数     平成17年度  国 68万人、地方 304万人

 地方公務員 28.5兆円(304.2万人)平成16年度
  平均時給4,595.6円/時
  ※年間2040時間労働
  年間の祝日15日と有給10日を差し引き
  平日は1日8時間、土曜日は隔週で4時間労働とする 

  国家公務員 6.1兆円(94.6万人)平成17年度
  ※独法0.7兆円等を含み、郵政公社2.4兆円を除く
  うち日本郵政除く6.1兆円68.4万人 平均3,999.2円/時
  ※年間2230.8時間労働
  週平均42.9時間×52週間

  ただし、議員系は含まれない。あくまで行政職(特別、一般)

 ・喫煙職員      平均20%と仮定
 ・一人が勤務時間中に一日15本を吸うと仮定(平均は20%)
    一人一日の喫煙本数については、厚生労働省の以下の調査を
     参考にした。いずれも11本から20本が全体の50近くを占めている。
     平成10年度調査平成16年度調査  

 ・1本の喫煙につき最低10分かかると仮定
    1本喫煙すうのに要する時間は5分から7分であるが、
    
職場から分煙施設まで歩く時間(往復)も含めた。  

 出典:総人件費改革の現状と取組(中馬弘毅臨時議員配布資料)
  http://www.gyoukaku.go.jp/soujinkenhi/pdf/180427_daijin2.pdf

 そこで行政系の全公務員の平均喫煙率を20%と仮定した場合、年間の公金損失額は、次のように計算される。

 地方公務員
  304万人×0.2×4,596円/時間×
  (10分×15本)/60分×250日=
1兆7,465億円

 国家公務員
  68万人×0.2×3,999円/時間×
  (10分×15本)/60分×280日=
3,807億円

 
何と、約2兆1,272億円と試算された!
 総人件費の6.1%にも及ぶ驚くべき数字である。



損害賠償の可能性

 現在のところ、国相手の住民訴訟は出来ないが、国家賠償訴訟を提起することはできる。てはじめに都道府県、政令指定都市相手に住民監査請求、住民訴訟を行うことは可能だ。


民間企業の場合

 また企業でも調査を行い、損害額を個々人で算定し、給与、ボーナスから差し引くくらいのことをすべきであろう。

 聞けば、新聞社、出版社などでは依然として、分煙が行われておらず、受動喫煙の被害大きいという。これについては、私は民事(709条)の不法行為で訴訟を提起すべしと提案してきた。

 出版業は一部を除き、その経営は瀕死の状態にあるという。朝日新聞もはじめて大赤字を計上している。その背景のひとつに喫煙の問題があるのではないかと考えるがどうであろうか? まずは全面禁煙とすべきである。