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  ▼ 記者の視点
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政権交代で動く霞が関人事制度改革
民主党マニフェスト
2009.8.5

 今月30日に投開票される衆院選。民主党に強い追い風が吹き、いよいよ政権交代が現実味を帯びてきた。民主党マニフェストには、国のありようを変える刺激的な改革メニューが並ぶが、最も興味深いのは100人を超える国会議員を霞が関に送り込むという構想だ。官僚政治からの脱却を意識した方針が、各省庁の政策決定プロセス、人事制度にどんな影響を与えてくるか。

 民主党マニフェストでは、政官関係を抜本的に見直すための具体策として、与党議員100人以上を大臣、副大臣、政務官として配置する考えを明記。大臣以下の「政務三役」を中心として政治主導でさまざまな政策を決めていく方針を打ち出した。さらに中央省庁の幹部人事制度の新設、事務次官会議の廃止や、天下り全面禁止といった公約からは、大胆な人事改革を通じて、霞が関の政策決定プロセスを変えていこうとする意志が読み取れる。

 政権交代が実現すれば、厚生労働省にも10人近い議員がさまざまな医療政策の立案、調整、決定にかかわってくる。彼らが実際にどのように機能するかは現時点ではっきりしないが、考えられるのは年金担当の副大臣、医薬行政担当の政務官というようにある程度の役割分担が行われるのだろう。決断力を持った政治家を、特定領域の政策に専念できるように配置できれば、従来の省議や局議の在り方も変わってくる。当然、これまでの慣例にとらわれない人事、組織改革が政治主導で判断されるケースは確実に増えてくる。

●民間の積極採用も

 民主党政権の誕生を見越すように、各省庁では長く慣例で行われてきた人事制度が少しずつ見直される動きも出始めている。

 厚生労働省で先月話題になったのは、長く医系技官のポストだった医政局長に、医師ではない阿曽沼慎司社会・援護局長が就き、これまでキャリア官僚のポストだった保険局長に医系技官の外口崇医政局長が就任した幹部人事。舛添厚労相主導ともいわれる幹部人事は、従来の慣例にとらわれない厚労省改革を推し進めるという強いメッセージにも見える。だが、民主党が想定する霞が関改革は、従来の人事配置を見直すといったレベルにとどまらない可能性が高い。

 キャリア官僚、そして医系、薬系といった専門職を従来にないルートで動かすだけでなく、官僚政治からの脱却という方針からは、民間や地方から人材を積極的に登用していくという考え方も出てくる。外国の中央官庁、関連機関との大規模な人事交流なども検討課題になるかも知れない。

 いずれにしても、今は霞が関に存在しない優れた人材を特別公務員のような形で迎え入れ、ある程度の権限を委ねるといった考え方が改革の柱の1つになる。従来にないアイデア、発想を持った多くの人材を霞が関に迎え入れるには待遇面などでの課題も多いが、それくらい思い切った人事制度改革を決断しなければ、政治の強いリーダーシップも生まれてこない。

●人事が変われば予算も変わる

 霞が関改革の鍵を握る聖域なき人事制度改革−。長く続き過ぎた制度と、硬直した予算の考え方には変化が求められ、今までとは違った視点から中央省庁の在り方を徹底的に見直す時期に来ている。政治主導で、従来の慣例、発想にとらわれない“人事”が動き出せば、政策を数値化したものといえる“予算”もまた変わってくる。

 政権交代後、民主党マニフェストがどこまで実行されるかは未知数だが、かなりドラスチックな人事制度改革に踏み切る覚悟だけは強く伝わってくる。霞が関改革の象徴ともいえる人事制度改革で、従来政権ではできなかった実行力が発揮できれば、後年、日本の行政システムが大きく変わった分岐点として、今夏の衆院選が認識されるはずだ。(清水 康功)

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