島根県の石見地方東部の拠点病院である大田市立病院(339床)で、3人の外科医師が全員、来春までに退職することが4日、分かった。現時点で補充見通しはなく、人口4万人の市で唯一の救急病院としての機能低下も危ぶまれている。
3人を派遣してきた広島大医学部の第1外科が、所属する医師の激減などに伴い、引き揚げの意向を伝えた。1人は9月末、残る2人も来年3月末で退職する予定だ。
同病院の外科の常勤医師はピーク時の2003年度、6人いた。だが、派遣元の広島大第1外科の入局者が年平均10人だったのが、ここ4年は同2・5人と激減。開業や内科転向も相次ぎ、計120人いた医局員が5年で約20人減り、派遣が難しくなったという。
背景には、新卒医師が研修先を自由に選べるようになった04年度からの臨床研修制度がある。東京の大病院などが人気の半面、地方の大学や、外科や産婦人科など勤務のハードな診療科では志望者が減った。
さらに大田市立病院では、内視鏡検査のできる専門医が不在となった08年度から人間ドックも中止し、手術の必要な患者が減った事情もある。第1外科の末田泰二郎教授は「医局員が減る中、腕を磨けない病院に若い医師を派遣する余裕はない」と説明する。
竹腰創一市長は「救急医療もきわめて厳しくなる。一自治体の努力では限界だ」とし、「松江や出雲に偏在する外科医を石見にも回してもらうよう大学や県に働き掛けるとともに、国にも臨床研修制度の根本的な見直しを求めていく」と話している。(馬場洋太)
【写真説明】外科医師がゼロになる恐れが出てきた大田市立病院
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