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太宰治の7作にGHQ検閲の跡、削除指示も 米大に資料(1/2ページ)

2009年8月2日3時3分

写真:GHQの検閲を受けた「人魚の海」のゲラ。赤鉛筆で削除部分に×印が付けられ、上部に「delete(削除)」と書かれている=横手教授提供GHQの検閲を受けた「人魚の海」のゲラ。赤鉛筆で削除部分に×印が付けられ、上部に「delete(削除)」と書かれている=横手教授提供

 作家の太宰治が終戦直後の45〜47年に出版した4冊の中の7作品が連合国軍総司令部(GHQ)の検閲を受け、大幅に内容を修正されていたことがわかった。検閲関連の資料を多く保存する米メリーランド大のプランゲ文庫からゲラなどが見つかった。太宰は今年で生誕100年。研究者は「戦後の太宰像を考えるうえで貴重な発見」と話している。

 プランゲ文庫には、検閲のためにGHQが集めた日本の新聞や雑誌などが保存されている。約60万ページの中から、近代日本文学を研究する米ペンシルベニア州立大のジョナサン・エイブル助教授と長崎総合科学大の横手一彦教授が4〜5月、太宰関連の資料を見つけた。

 横手教授によると、修正が確認できたのは「薄明(はくめい)」「新釈諸国噺(ばなし)」「ろまん燈籠(どうろう)」「黄村(おうそん)先生言行録」の4冊。小説や随筆など計数十作品が収められ、「鉄面皮」など7作品で検閲された跡が確認されたという。太宰がGHQの検閲を受けた跡は98年に小説「トカトントン」で見つかったが、これだけの数の作品で確認されたのは初めて。

 「新釈諸国噺」に収録された小説「人魚の海」では、友人のかたきを討った松前の武士が私闘の責任を取って切腹する場面がほぼ1ページ削られた。小説「黄村先生言行録」では「万古不易の豊葦原瑞穂国」のように日本神話に由来する表現が削除された。いずれのゲラにも、検閲官が赤鉛筆で記したと思われる「delete(削除)」の文字が残っていた。

 太宰は終戦後に多くの作品を改稿(書き直し)しているが、48年6月に東京・玉川上水で入水。検閲、修正された7作品はGHQの占領が終わって3年後の55年、筑摩書房が出版した「太宰治全集」で元原稿の形に復元された。

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