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閉館の告知ポスターを寂しげな表情で見る母親たち=1日午前11時すぎ、さいたま市大宮区吉敷町4丁目のイトーヨーカドー大宮店3階「子ども図書館」 |
さいたま市大宮区吉敷町4丁目のイトーヨーカドー大宮店(井村綾子店長)は1日、同店3階で26年5カ月間運営してきた「子ども図書館」を9月23日で閉館する、と同日付朝刊各紙の折り込みチラシなどで表明した。全国に8カ所ある図書館が一斉に閉鎖される。イトーヨーカ堂から委託され8図書館を運営してきた童話屋(東京都杉並区)では担当部門が消滅、専任司書9人を含む女性41人が失職する。
1日の朝刊チラシは裏表フルカラー。閉館は商品写真をふんだんに使った朝市などの特売情報の下に、目立たない縦5センチ×横4センチの「お知らせ」として掲載。理由については「ここ数年、環境の変化からか、来店者が著しく減少しています。子ども図書館はひとつの役割を終えたのではないかと考えた」と書かれていた。
大宮店では午前9時の開店前に1階入り口のガラスドア隅、3階の図書館の入り口とカウンター脇の壁に同文のポスターが張り出された。
「えーっ、なくなっちゃうの」。午前11時すぎに来館した大宮区の女性看護師(33)は、長女(5)、次女(2)と紙芝居を選んでいてポスターに気が付いた。「買い物じゃなく、娘たちが大好きな紙芝居を借りるために来ているのに」。あぜんとした。
夏休み期間中のおはなし会や工作会、貸し出しを楽しみにしていた子どもと保護者にとって突然の告知は衝撃で、図書館のカウンターで涙ぐむ子も。
「え、なんで! 『ひとつの役割を終えた』って意味が分からない」と、ぶぜんとしたのは大宮区の母親(39)。4年前から利用しているが、「この文章では閉館の理由が理解できない」と話した。
同図書館の第1号は1978年7月、沼津店開館と同時に店舗の一角に誕生。99年4月開館の広島県福山店まで最高時には全国で13館が開設された。しかし、その後閉館が続き、現在は全国に8館。
最大の特徴は、本と子どもを知る図書館司書有資格者のフロアワークだ。童話屋の田中和雄社長(74)の哲学ともいえる「細心の心配り」が貫かれている。絵本架は高さ120センチの木製。表紙を前にして「3歳の子どもが自分で絵本を絵で選び、取り出せる」(田中社長)ことにこだわっている。
「本は子どもの心の栄養」と考え、司書たちは討議しながら選書する。繰り返し読み継がれる本約8600冊が約50平方bにレイアウトされている。年中無休で、今年6月末現在の会員登録者数は3万6215人。延べ貸出冊数は91万2827冊に及ぶ。
この日、大宮店では「26年間ありがとうございました」と書かれた司書の西田真琴さん(29)手作りの「こどもとしょかんだより」と、「これからもいい本にいっぱい出会ってね」とのメッセージ入りのしおりなどが、スタッフから一人一人の来館者に渡された。すべて手製だ。
西田さんらが閉鎖を知ったのは6月18日、童話屋の緊急司書会議の席上。田中社長が一斉閉館をイトーヨーカ堂側から告げられたのは、その6日前だったという。
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