2008年04月
2008年04月23日
「辻井喬＋堤清二回顧録」
編纂委員･川内康範さん
作家が書いた立身成功伝を刊行
岩崎定夢
４月９日掲載（執筆は８日）の川内康範さんの原稿で、川内先生との出会いは『週刊映画タイムス』だと記述した。私は大映と日活の撮影所担当取材記者で、川内先生は映像化を目論む連載恋愛小説を書かれていた。
１２日の読売新聞文化面に、「辻井喬＋堤清二回顧録 叙情と闘争」が掲載されている。毎週土曜日掲載の１２回目だが、その文中に「川内康範さんと財界アルプス文庫」のことが出てきて、わが人生の忘却部分を思い出させてくれた。２度と忘れないために、ここに記述しておきたい。
株式会社週刊映画タイムス社は松竹、大映、東宝映画など邦画製作会社５社が資本金の５０％を均等出資し、他の半額は代表取締役社長の松本三郎さんやキネマ旬報社の上森子鉄さん、それに後楽園や生命保険会社などが出資して昭和３４年初春に創刊した。だが、雨後のたけのこのように創刊する週刊誌ブームのなかで、週刊明星や平凡、相次ぐ女性週刊誌やヤングレディなどなどとの販売競争に敗れ、１年ほどで休刊となった。
８０数人いた編集部員の大半は２分して、中央公論社と森脇文庫へ移籍。その後に創刊された『週刊公論』や『週刊スリラ〜』などで活躍した。
週刊映画タイムス社には残務整理などで４〜５人が残ったが、私は、連載漫画を寄稿されていた小島功さんの紹介で高田馬場に所在した「芸術学院出版局」へ出向。月刊『若人芸術』編集長の井上敏雄さんが芳文社の『週刊漫画タイムス』編集部へ移るための後釜として『若人芸術』誌を、３５年春から３９年秋までお引き受けした。
残務整理組の中に、詩人の芳賀章内さんがいた。社長の松本三郎さんは、多忙な財界人の「勉強不足、知識補足」用として「時の話題、世界の動きなどを簡潔明瞭に編集した」B６判の知識解説書『アルプスシリーズ』を旬刊で発行していた。だが、超多忙の財界人には、その小冊子を読む時間もない。そんな人向けに、日本で初めての録音出版化。つまり、カセットテープに吹き込んで耳で聞く解説方法にも拡大していた。
活字出版と音声出版の二本立てを取り入れた松本社長と、芳賀章内さんが考え出した出版物が、一代にして企業を立ち上げた人、立身成功者の足跡、労苦振りを小説家に書かせて刊行し、それを原作とした映画、もしくはテレビドラマ化をはかることだった。昭和３５年のことである。
「辻井喬＋堤清二回顧録 叙情と闘争」１２ 父の死 から、引用紹介しよう。
≪ 小説『地中海』で第４回芥川賞を受けた富沢有為男も、『雷帝堤康次郎』の中で、実名で登場する邦子に「やっぱり（中略）」と言わせている。（中略）
この作品を読むと、僕も彼の取材に応じて堤康次郎に関する情報を提供したと思えるのだが、覚えていない。
この作品の奥付を見ると、昭和３７年８月になっているから、父の死の１年８か月前のことである。この本はアルプスという出版社から「財界アルプス文庫」のなかの１冊として出版されているが、編纂委員には、奥野信太郎、川内康範、川口松太郎、源氏鶏太、子母沢寛、渋沢秀雄、徳川夢声という、錚々たるメンバーが名前を連ねているから、彼らのうちの誰かか、或いは富沢有為男と昵懇であった寺内大吉から話があつたのかもしれないと思う。（攻略）≫
辻井喬＋堤清二回顧録では数回前に同人誌『近代説話』の話が克明に記述されている。私の師・清水正二郎（胡桃沢耕史）は昭和３０年代にJR水道橋駅近くの神田三崎町に事務所を構えていて、そこが『近代説話』の事務所を兼ねていた。直木賞作家７人を生み出した同人雑誌の事務所内に、私も机をいただいて、月刊『若人芸術』の編集を請け負いがてら、フリーライター業をしていた。
『若人芸術』には、芳賀章内さんの連載があり、また、私のほうは作家の尾崎士郎さん、川内康範さんと松本社長が話し合われて創刊が決まった旬刊新聞『蕺草・どくだみ』の仕事の合間に、『財界アルプス文庫』の仕事もお手伝いしてきたのであった。（この項つづく。香港に滞在中。５月２日の聖火リレーを見物後、帰国するので、５月３日以降の掲載となります）
2008年04月12日
会員の新刊「北条鱗紋」
新刊案内
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2008年04月09日
川内康範さん逝去
正義の味方･康範さん
森進一許さぬまま…川内康範氏死去4月8日10時41分配信 デイリースポーツ
「世の中の膿みを掃除せよ」
岩崎定夢 サンデー毎日の青木英一記者やフリーライターの高瀬潔さんは『月光仮面は誰でしょう』で、メディカルライターの廣海輝明さんは『骨まで愛して』、かくいう私は『闘魂』がカラオケの持ち歌である。いずれも作家･川内康範（かわうち・こうはん）さんが作詞した歌である。 その川内さんが６日に、入院先の青森県八戸市の病院で亡くなられた。８８歳だった。廣海さんとは昨７日夜、新宿の日本海庄やで５時間ほど、昔話を肴に痛飲した。明日９日夜もまた、テレビ番組『月光仮面』を見て育った年代の人４〜５人で、勝手に偲ぶことになっている。 川内さんに知遇を得たのは昭和３３(1958)年２月だった。東宝、松竹、大映など当時６社あった映画会社のうち５社と朝日生命、後楽園、キネマ旬報などが均等に資本を出して創刊した『週刊映画タイムス』に移ったときで、創刊号からテレビドラマ化を想定した連載小説を書かれていた。 商運悪く週刊誌は１年足らずで休刊となったとき、週刊映画タイムスのオーナー松本三郎さんと、作家の尾崎士郎さん、川内さんが話し合い、「世の中の膿みを掃除する」ためのタブロイド判旬刊新聞『蕺草どくだみ』を発行することになった。題字は尾崎さんが筆太い書体で書き、川内さんが主筆･顧問、私が編集長で休刊する３６年まで務めた。 近年、最後にお会いしたのは１昨年夏である。その直前に直筆の長いお手紙をいただいたり、アメリカと日本関係や、自民党政権を叱る書なども贈られた。歴代の首相ご意見番として活躍されていた。で、八戸から上京されるとき、定宿としている日航ホテルでお会いし、長い時間、昔話や共通の人の動向などをやりとりした。人生１００歳時代でさらなる提言を頂きたいお方だった。心からご冥福をお祈りいたします。
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