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【 ビル・トッテン 】
 日本初のパッケージ・ソフトウエア販売会社「アシスト」代表取締役。1941年米国カリフォルニア州ロングビーチ生まれ。69年、SDC社員として日本の市場調査のため初来日。同社退社後の72年に再来日、資本金100万円、社員7人でアシスト社設立、現在に至る。『アングロサクソンは人間を不幸にする』(PHP研究所)など著書多数。テレビ出演や講演なども精力的にこなす。




  遺伝子組み換え食品

2009/07/30

 5月19日、アメリカ環境医学会(AAEM)は、遺伝子組み換えされた食品は健康に悪影響を及ぼすので、即座に出荷を停止することを求めるポジション・ペーパーを発表した。

学会が使用禁止勧告

 この医師学会は、遺伝子組み換え作物の使用を禁止するよう勧告したほか、長期的な安全試験を実施すること。遺伝子組み換え食品のラベル表示を実施すること。医師に対しては患者や医療業界に遺伝子組み換え食品を避けるように教育すること。遺伝子組み換え食品の人体への影響を調査研究するために第三者機関で科学的研究データを蓄積すべきだという方針も示した。

 なぜなら、遺伝子組み換え作物を使って多数の動物実験を行った結果、不妊症、免疫不全、老化促進、肝臓、腎臓、脾臓(ひぞう)、胃腸器官におけるさまざま分泌不全等々、その毒性が認められたからである。

 しかしこのAAEMの発表を、日米の主流メディアは完全に黙殺した。一般国民がこの危険性を知り、政府に規制を求めれば、それは遺伝子組み換えを推進するバイオテクノロジーの巨大企業に大きな打撃となるからであろう。

消費者あざむく

 遺伝子組み換え食品がアメリカに出始めたのは90年代初めである。ブッシュ大統領は「その安全性を確認するためのテストを政府機関はしなくていい」と命じただけでなく、その購入を避けたい消費者をあざむくために、食品に「遺伝子組み換え作物は使っていません」という表示をすることも禁じた。

 アメリカ政府は自ら検査をすることもなく、遺伝子組み換えを行うバイオ企業の「組み換えの前後で、生物体の中身はほとんど同じ」という主張を採用したのである。

 しかしその一方で、バイオ企業は遺伝子組み換え種はユニークであり、普通の種とは違うからと使用に対して特許料の支払いを生産者に求めている。

安全性検査は当然

 自然界になく、人工的に作られた遺伝子組み換え作物を動物や人が食べる前に、十分な安全性検査を求めるのは、予防的方策として当然のことだし、購入に際して使用有無を判断する権利は与えられるべきだ。

 しかし日本でも、全重量に対して5%以上でなければ表示義務はなく、原料として使用されていて食卓に上っている可能性は高い(ちなみにヨーロッパではその基準は0・9%以上である)。

 遺伝子組み換え食品が広く出回るようになってから10年以上たつ。日本は肉や農作物など多くをアメリカから輸入している。身の回りにはかつてなかったほどアレルギーや病気、健康問題を抱える人が増えている。AAEMのペーパーが示すように、食べたラットが死ぬような操作をされた大豆やトウモロコシと、それらが関係がないはずはない。

 しかしブッシュ、クリントン、そしてブッシュ政権と、ずっとこの危険な食物を許してきた。もちろんオバマが農務長官に選んだのも、バイオ企業と深いつながりを持つ人物である。アメリカは企業の利益のための、国民をモルモットとした壮大な実験をしている。それも、何年続けても危険か安全かは絶対に証明できない実験方法でだ。

 日本政府も、新型インフルエンザの恐怖をあおるよりも、AAEMが提案するように、アメリカから大量に輸入される毒についての啓蒙(けいもう)を国民に始めるべきだ。

アメリカ環境医学会

http://www.aaemonline.org/pressrelease.html

 (アシスト代表取締役、毎週木曜日に掲載します)
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