「反貧困ネットワーク」の集会。つなぎの作業服姿で元派遣社員の池田一慶氏も参加した=31日夜、東京都千代田区、福留庸友撮影
与野党の政治家6人が壇上に並び、「貧困」の課題に取り組む姿勢を口々にアピールした。31日、「反貧困ネットワーク」が東京都千代田区で開いた集会。障害者、母子家庭、派遣労働者……。貧困に直面する当事者らも政治に注文をぶつけた。
会場となった総評会館には約350人が詰めかけ、日野自動車の工場で働いてきた元派遣社員、池田一慶(いっけい)氏(29)の姿もあった。今回の総選挙で、社民党の比例区東京ブロックの候補者になる。
旧東京都立大で物理学を学び、教員を目指したがかなわず、05年から派遣社員に。油まみれで働きながら、正社員との待遇の格差を実感した。職を失う不安から、体調が悪くても休めない。契約の切れる月末ごとに、解雇された人の不要になった作業着が山積みになり「調整弁」であることを目の当たりにした。
06年に仲間と派遣会社の労組をつくり、横断型のNPO法人「ガテン系連帯」も設立、待遇改善や各地の労組の支援に取り組んできた。昨年末に東京・日比谷公園にできた「年越し派遣村」では、ボランティアとして布団運びや炊き出しを手伝った。
そのころ社民党が労組を通じて立候補を打診してきた。労組内では「派遣切り対応でそれどころでない」と慎重論もあったが、「今でなければ出ようと思っても出られない。当事者の声を政治に届ける意味はある」と今年3月、覚悟を決めた。
これまでは党派性なく活動してきた。今はオレンジ色のつなぎの作業服姿で街頭に立ち、「派遣の立場から社会を変える」と書いた旗を掲げて社民党への支持を訴える。「大政党では様々な立場の議員がいて、主張が埋もれてしまう。社民党なら、働く者の立場の党として各党を説得できる」
たしかに、6月末に野党3党が国会提出にこぎつけた労働者派遣法改正案では、社民党と国民新党が規制の厳格化を主導した。年明けから調整が重ねられたが、民主党は民間労組出身者も多く、派遣先を狭める改正案には異論も強かった。結局、総選挙を控えて3党の結束を優先し、民主党が歩み寄った経緯がある。
いまや社会問題になり、各党も貧困を無視できなくなった。マニフェストにも「貧困」の文字が目につく。この日、壇上に立った民主党の菅直人・代表代行は「マニフェストに『貧困の実態調査』を入れた。政権交代があれば努力したい」と述べた。
反貧困ネットが集会宣言で訴えたのは「国による貧困率の測定」と「削減目標」。国の健全さの観点から政策を評価する指標だ。経済指標だけでは暮らしぶりはみえない。まずは現実を直視するよう候補者に問いかけた。
派遣村で村長をつとめた湯浅誠・反貧困ネット事務局長(40)は、いまの状況を「ようやく足がかりができた」とみる。「貧困問題に取り組む熱心な議員はいまも一部でしかない。政権交代すればバラ色だとは思っていない。政争の具になって何も進まないようになるのは勘弁して欲しい」