大阪府は31日、泉州地域の府立泉州救命救急センターと泉佐野、貝塚、阪南の3市立病院を経営統合させる方向で検討に入った。医師不足を打開するため運営規模を拡大し、効率化により赤字を解消するのが目的。10月半ばまでに素案をまとめる。橋下徹知事は「具体的には今後検討するが、統合の方向で進めたい」と語った。
同日の府戦略本部会議で、4医療機関の院長らが出席して協議。阪大医学部の遠山正彌教授らが私案を提出した。4医療機関を一つの独立行政法人の下に統合。貝塚病院を北分院、泉佐野病院を南分院とし、入院患者はこの2院と府立泉州センターで担当。医師や看護師、薬剤師らの待遇一本化も打ち出した。この日の議論では、阪南病院は縮小・存続の方向となった。
泉州地域は、人口10万人当たりの医師数が186人と府平均の250人を大きく下回る。泉佐野病院は07年度に12億円、阪南病院は11億円の経常損失を計上。阪南病院は、一時内科を閉鎖する措置も取っている。【福田隆】
大阪府が4医療機関の統合を模索している背景には、▽大学病院など高度な医療が行える医療機関が府北部や大阪市内に偏り、南部では医療機関が比較的少ない状況が続いている▽新人医師の臨床研修制度などの影響で医師不足となった大学病院が医師を引き揚げ、医師派遣を受けていた各地の公立病院では診療科維持に必要な医師数を確保できない--などがある。
対象となった阪南市立病院は07年、医師退職に伴い内科を閉鎖(現在は再開)。一時は入院取りやめの方針も出された。市立貝塚病院では07年4月から、夜間の産科救急受け入れを休止し、近隣の市立泉佐野病院へ搬送している。統合には医療機関の効率化を図り、高度な医療を集約する狙いがあるとみられるが、地域の医療機関が縮小するとの不安も招きかねず、府は住民に統合の必要性や利点・欠点を十分に説明する責任がある。【野田武】
毎日新聞 2009年7月31日 大阪夕刊