過去放送記録

FILE080:「触ってのお楽しみ」

2009年7月21日放送

 

梶本裕之(情報理工学)

人間の触覚はいまだ未知の部分が多く残されている分野だ。例えば「ざらざらする」と言ったとき実際に皮膚で何が生じているのか、まだ正確には分かっていない。
さらに人間のコミュニケーションの手段は映像や音声に限らない、髪をなでれば安心し,手を握りあえば心が通じるように,コミュニケーションの究極には触覚がある。

梶本裕之は、まだ謎だらけの触覚の仕組みや、触覚がヒトの心にどのような影響を与えるかを研究している、いま注目の若手学者だ。

今回は、梶本研究室が開発したユニークな触覚装置を爆笑問題の二人が次々と体験していく。それは驚きと笑いが連発する未体験ゾーンだ。そして、そうした触覚の研究の果てにはどんな未来が待ち受けているのか、語り合っていく。



梶本裕之(かじもとひろゆき)
1975年生まれ。1998年3月 東京大学工学部 計数工学科卒業。同年9月-1999年7月 University of California, Los Angeles 留学。2001年3月 東京大学大学院 工学系研究科 計数工学専攻修士課程卒業。2007年より電気通信大学人間コミュニケーション学科准教授。
触覚研究でいま注目されている若手研究者だ。

今回の対戦内容

梶本裕之(かじもとひろゆき)/爆笑問題(太田/田中)


梶本:触覚の、他の感覚との大きな違いは何か?
視覚は、一応ただ見ることができる。音もただ聞くことができる。
でも触覚は、相互作用なんですね。つまり触って相手に触れられる。触る、触られるの関係があって、初めて感覚が生じる。
そこに気持ちよさというのが生じやすいんだとは思います。
太田:可愛い女の子とこうやって抱き合っている時の方が、幸せな感じはあるじゃないですか。こいつなんかよく女を連れ込んだりしているんですけど。ラブホテルのベッドでこんなことやりながらね、やっているんですよ、よく。
田中:やってないですよ。
太田:なぜこうやって髪をこうやったりしながら話すのか。
梶本:それはやはり、あの進化論的にはある程度説明がついていて。おサルさんの時代からですね。皮膚の上に虫が這っていたり、あるいは皮膚の下に寄生虫がいるというような状況をまず気持ち悪いと感じないと、まあその個体はアウトなわけです。で、まず気持ち悪いと感じて、そしてかきむしって、かきむしった気持ちよさというか、虫が這う気持ち悪さっていうのは説明が付きます。さらに、先ほどこうおっしゃったんですが。サル同士のグルーミングって言われているもので、毛繕いをするんですねサルの段階で、そしてあれは毛繕いがコミュニケーションになってきて、その触覚的なこうしたら気持ちいい。あるいは、まあ抱き合うと気持ちいい、そういった感覚っていうのが生き残ってきたんだと思いますね。

先生の対戦感想

梶本裕之(かじもとひろゆき)


達成感というか、だいぶ疲れましたね。まあでも、お二人とも思ったよりもだいぶ優しい方というか、まあ話を聞いてくださったような気がします。学生たちのプレゼンがお二人にウケたのが、一番うれしいですね。実際に学生にプレゼンさせたのは、やっぱり学生のモチベーションっていうこともあるので、その辺が今後更にやる気を出して研究をやってくれるといいなと思っています。

爆笑問題の対戦感想

田中:個人的には結構触覚は気にするというか、こだわると言っては何だけど。例えば洋服とかも本当に着た時の着心地がいいとか、好きなんだよね。中でも言っていたように、ネコが気持ちいいみたいなのがやっぱりかなり感じるというか、こだわるというか。これはちょっとどんどん進めてほしいと思っているんだけどね、こういう研究は。
太田:笑い増幅器、まああれを使おうとは思わないけどね。ただまあ、我々がやっている番組で笑いを足すっていうのはまさにそういうことだから。まあライブであれをね、使ってそういう効果があるとはちょっとどうなんだろ。あまりまあ、思わないかな。でも、重い客の時は、確かにああいうのが欲しくなるよね。 田中:まあね。無限プチプチ的なものとかっていうのも、試みとして面白いというか、あの手のやつって。完ぺきには再現出来ないじゃない、やっぱり。
おれは本当にあの骨がポキポキなるこの、これが何でこんなに気持ちいいのかっていうのは、不思議でしょうがないんだよ。何でやらずにおれないというか。やるとすごく安心するし、気持ちがいい。この気持ちよさっていうのは、ネコとかは肌触りが本当に気持ちいいみたいなすごく触覚的な気持ちよさなんだけど、これはまたそれとはちょっと違う感じの気持ちよさを感じるというか。実際に分からない。骨がパキンってものすごい解放感というか。それはちょっと知りたいなと。
太田:ただ、エンタテイメントって、例えば映画とか、まあ我々がやっているようなこととか、お笑いとか、テレビとかって、昔からそういうのって言われているじゃない。これにもう一個足して、例えばにおいが出るとか。何か3Dなんかも最近ようやくあれだけど。遊園地的な、アトラクション的なものとしては、要するに割とすぐに出来るかもしれないけど、なかなか意外と定着させるっていうのは難しいかな。
田中:そういうエンタテイメントも、もちろんあるんだろうけど、ちょっとのりが違うような気がする。みんなでワーッという感じの雰囲気ではなさそう。
10万人触りたくて集まるみたいなのがあったら面白いんだけど。

ディレクター観戦後記

「触覚の研究は新しい発見の連続です。」
これは、打合せで初めてお会いした時の梶本先生の言葉。実は触覚のような普通の感覚がなぜ?と意外な感じがした。
しかし怪しい触覚の世界に足を踏み入れると、実に謎だらけの感覚であることを痛感することになる。例えば、触覚を入力する皮膚ひとつとっても謎だ。
体全体を覆い空間的に広がっているが、実は皮膚だけではパターン認識ができないという。つまり背中などの場合、何かが触っているがそれがどのようなものであるのか、背中の皮膚だけでは認識ができないのだという。なにか得体の知れないものが触れた、振り払ってみて視覚で確認してああなんだというのが私たちの日常の行動パターン。これが、触覚の最大の特徴かもしれない。得体の知れない感覚を入力すると振り払うという出力を生み出す。肌にかゆみを感じると皮膚を掻く。これも入力と出力。人の五感は実に複雑に絡み合いながら存在している。かのアリストテレスも、触覚で得られるものが多すぎるため触覚を一つの感覚として言っていいのか悩んだのではと素人ながらに推測する。
ともかく謎だらけの触覚世界に、とてつもない新発見がもたらされる日も遠くはない、それはこのオモチャ箱をひっくり返したような梶本研究室からに違いないと、今回の取材を通して感じた。

つぶやき


KEYWORD

生命

人間

社会

未来

関連カテゴリー
過去放送一覧
7月28日
FILE081:「世も金もゲームなり」
7月21日
FILE080:「触ってのお楽しみ」
7月14日
FILE079:「のある話」
7月7日
FILE078:「やっぱり、みんな有罪ですか?」
6月30日
FILE077: 「U.S. I LOVE YOU」
6月23日
FILE076:「『時間』という名の怪物」
6月16日
FILE075:「博士が愛した『イノチ』
6月9日
FILE074:「私は ここに いる」
6月2日
FILE073:「人類よ声を聴け」
5月26日
FILE072:「お米レボリューション」
5月19日
FILE071:「ヒトと殺しと男と女」
4月28日
FILE070:「シンプル最高/再考」
4月21日
FILE069:「永久エネルギー誕生!」
4月14日
FILE068:「イスラム・世界・ニッポン」
4月7日
FILE067:「人口は口ほどにものを言う」
3月31日
FILE066:「この世は‘破れ’ている」
3月24日
「爆笑問題のニッポンの教養」スペシャル:『ニッポン チャチャチャ』
3月17日
アンコール@成人の日スペシャル:「大人になる」ということ
3月10日
FILE065:「学校は何も教えてくれない?」
3月3日
FILE064:「こころは水で作られる!?」
2月24日
FILE063:「ロボットの虫」
2月17日
FILE062:「芸術は“カラダ”だ」
2月10日
FILE061:「あなたの知らないメロデイー」
2月3日
FILE060:「おしゃべりな脳」
1月27日
FILE059:「建築のチカラ」
1月20日
FILE058:「万物は汚れている」
1月13日
アンコール@FILE037:「私が愛したゴリラ(後編)」
1月12日
成人の日スペシャル:「大人になる」ということ
1月6日
アンコール@FILE037:「私が愛したゴリラ(前編)」
12月16日
アンコール@FILE049:「愛の政治学入門」
12月9日
FILE057:「謎の巨大イカを追え!」
12月2日
FILE056:「誰(た)がためのロボットか?」
11月25日
早稲田大学スペシャル:平成の突破力〜ニッポンを変えますか?〜
11月18日
FILE055:「『飛行少年』と呼ばれて」 
11月11日
FILE054:「日本語って“ヤバい”」
11月4日
FILE053:「21世紀の錬金術師」
10月28日
FILE052:「超能力お見せします」
10月21日
FILE051:「宇宙を駆けるX」
10月7日
FILE050: 「“あ〜疲れた”の正体」
9月30日
FILE049:「愛の政治学入門」
9月23日
FILE048:「デザインで世界を改造せよ」
9月16日
FILE047:「“学校の怪談”のヒ・ミ・ツ」
9月9日
FILE046:「『ニッポン』を疑え」
8月26日
FILE045:「128億光年の宇宙見物」
7月22日
FILE044:「どこから来たのか ニッポンのヒト」
7月15日
FILE043:「アートのハート 後編 〜伝えること 伝わること〜」
7月8日
FILE043:「アートのハート 前編 〜芸術は爆発、か?〜」
6月24日
FILE042:「クラゲ 世界征服計画」
6月17日
FILE041:「恐竜は生きている?」
6月10日
FILE040:「ウイルス その奇妙な生き方」
6月3日
FILE039:「愛と幻想の価値論」
5月27日
FILE038:「この世はすべてお見通し?」
5月20日
FILE037:「私が愛したゴリラ(後編)」
5月13日
FILE037:「私が愛したゴリラ(前編)」
4月29日
FILE036:「世界を支配する『ちいさな』話」
4月22日
FILE035:「哲学を破壊せよ」
4月15日
FILE034:「さよならメタボ」
4月8日
FILE033:「プロファイリングによると…」
4月1日
FILE032:「世界は編集されている?」
3月25日
京都大学スペシャル:爆笑問題×京大 独創力!
3月18日
FILE031:「我働くゆえに幸(さち)あり?」
3月11日
総集編:「話せばわかったか 〜REMIX 2〜」
3月4日
FILE030:「検索エンジンは脳の夢を見る」
2月26日
FILE029:「人生を振りかえる 夜」
2月19日
FILE028:「スポ根なんていらない?」
2月12日
FILE027:「脳を創る男」
2月5日
FILE026:「みんなの憲法入門」
1月29日
FILE025:「人類の希望は 美美美 (ビビビ)」
1月22日
FILE024:「『脱出したい!』のココロ」
1月15日
FILE023:「平和は闘いだ」
1月8日
FILE022:「科学的分身の術」
1月2日
新年会スペシャル: 〜2008年 これがニッポンの大問題〜
12月18日
総集編:「リミックス〜総集編〜」
12月11日
FILE021:「『体内時計』は いま 何時?」
12月4日
FILE020:「コトバから逃げられないワタクシ」
11月27日
FILE019:「この世はすべて錯覚だ」
11月20日
FILE018:「人類の明日は晴れか雨か?」
11月13日
FILE017:「深海に40億年前の世界を見た!」
11月6日
FILE016:「生き残りの条件≠強さ」
10月30日
FILE015:「ひきこもりでセカイが開く時」
10月23日
FILE014:「人間は考える腸である」
10月16日
FILE013:「異形のモノに美は宿る」
10月9日
FILE012:「万物は渋滞する」
10月2日
FILE011:「生物が生物である理由(わけ)」
9月28日
爆笑問題のニッポンの教養スペシャル:爆笑問題×慶應義塾  2030の衝撃
9月14日
FILE010:「タイムマシンは宇宙の扉を開く」
8月31日
FILE009:「ロボットに人間を感じる時・・・」
7月27日
FILE008:「この形 ありえない・・・人間は失敗作だ」
7月13日
FILE007:「哲学ということ」
7月6日
FILE006:「教授が造ったスーパーカー」
6月22日
FILE005:「ヒトはなぜ死ぬのか?」
5月25日
FILE004:「人間は動物である。ただし…。」
5月11日
FILE003:「宇宙人はどこにいるのか?」
4月27日
FILE002:「現代の秘境は人間の‘こころ’だ」
4月13日
FILE001:「命のかたちお見せします」