【カブール栗田慎一】パキスタン部族地域で続く米軍の無人機によるミサイル攻撃が、武装勢力タリバンが支配するアフガニスタン南部でも多発している。無人機は今年に入って、従来の武装ヘリや戦闘機に代わって投入されるようになり、多数の市民が空爆に巻き込まれているという。攻撃で家族や家屋を失い、カブールに避難してきた人々は「ゲーム感覚で人殺しが続いている」と憤った。
カブール郊外にある避難民キャンプ。南部のヘルマンド州やカンダハル州などからの避難民約1万3000人が暮らす。
ヘルマンド州サンギン地区ミヤンルディ村から5月にたどり着いたヌール・モハマッドさん(28)は、血を流して横たわる我が子2人の遺体写真をポケットから取り出した。
1月にタリバンが村にやってきて米軍の車列を銃撃。数分後、「パイロット席のない小型機」が飛来し、ミサイル攻撃を開始した。しかし、タリバンは村から逃げた後。長男(5)と長女(4)は空爆で倒壊した家屋の下敷きになり、まもなく息を引き取った。
「米国はなぜ我が子を殺したのか。タリバンだと言うのか」。怒りを殺した静かな口調で問いかける。
爆撃で人口約7000人の村は壊滅状態となり、モハマッドさんは家族6人を連れてカンダハル郊外に避難。カンダハルも5月に戦闘が激化したため、カブール行きを決めた。
今年に入ってキャンプにたどり着いた避難民たちは、米軍の攻撃が従来の有人機から無人機に代わったと口をそろえた。トカゲの頭のような前部を持つ機体や金属音を響かせる特徴から、パキスタンへの越境攻撃で使われている無人機と同タイプとみられる。アフガン南部では今、頻繁に目撃されているという。
無人機は先端に取り付けられたカメラからの映像をもとに遠隔操作されている。
2月に無人機による空爆で母親を失ったというサンギン地区の別の村から来たミルアジャンさん(35)は「安全な場所にいる人間が、痛みも分からずに遊び感覚で人を殺しているのだろう」と語った。
毎日新聞 2009年7月30日 東京夕刊