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中田・横浜市長:辞意表明 「財政、軌道に乗った」 トップダウンに不満も /神奈川

 国政復帰も視野に改革派市長が任期を残して市政を離れる。28日に辞意表明した横浜市の中田宏市長(44)。辞職会見では「財政状況は健全化の軌道に乗っている」と財政改革の結果を総括し、新しい政治活動への意気込みを見せた。ただ、改革の推進力となったトップダウンに対し、職員からは不満の声が上がっていたのも事実。7年4カ月に及んだ中田市政の「功罪」は--。【山衛守剛、吉住遊】

 「先立つ財政がなければ何も実現しない。行財政改革を進め財政を健全化した」

 中田市長は会見で胸を張った。別表のようにさまざまな施策を打ち出し「あらゆるものを見直」してきた中でも、最も心血を注いだのは市の財政の立て直しだった。

 02年に就任すると、まず市債(借金)の公表を始め、市債の発行を制限。市立保育園民営化や学校給食調理業務の委託▽02~09年度で6926人の市職員削減--などでコスト削減に大なたをふるった。他方で税軽減などを盛り込んだ企業立地条例を設けて誘致を図り、税収増を実現。就任前の01年度に約6兆2000億円あった市の借入金は09年度は5兆2000億円(見込み)にまで減った。

 ただ進行中の課題もある。横浜開港150周年の目玉イベント「開国博Y150」の来場者数が伸び悩んでいる。主催する横浜開港150周年協会によると、会期(4~9月)中の有料入場者数は約500万人を見込むが28日現在、約64万人。会期の約3分の2が過ぎたのに、目標の1割程度にとどまる。イベント予算約120億円のうち約55億円は市の補助金だ。会見で責任の所在を問われた中田市長は「イベントの内容についてはもち屋(協会)が考える必要がある」とかわした。

 人員減の裏で職員のやる気をそいだとの指摘もある。職員約2万2000人に尋ねた満足度調査(3月公表)では、「現場重視の施策立案がなされている」の質問で70・3%、「市長・副市長はトップマネジメントとしての役割を果たしている」では60・7%が「そうは思わない」と回答。幹部と職員の温度差があらわになった。

 自治労横浜の岩沢弘秋書記長(56)は中田市政を振り返り「地道にやっている職員の声を聞かないやり方を続けてきた。締め付けの多い環境で職場は硬直化した」と話した。

   ◇   ◇

 地方自治法により、中田市長は辞職願提出から20日後の8月17日までに退職する。

 ◇あまりに唐突--マニフェストの評価に詳しい小池治・横浜国立大大学院教授(行政学)の話

 あまりに唐突という感はぬぐえない。よほど国政への強い思いを抑えられなかったのだろう。地方には地方の課題があり、国政選挙とは次元が違う。このタイミングでの辞任の理由にはならない。地方財政は不況による税収の落ち込みでますます厳しくなることが予想され、市長職に全力を投入すべきだった。任期をしっかり務めるのが行政の長の責任だ。

 ◇首長も驚きや困惑

 唐突な辞職表明に、県内の首長らも驚きや困惑を見せた。

 松下政経塾の先輩に当たる松沢成文知事は28日の定例会見で「政治家の出処進退の決断は最高の政治倫理。それを考えての決断と受け止めている」と語った。中田市長からは27日、辞職の意向を伝えられたという。松沢知事は「政治を新しい形に変えなければならないという強い気持ちを持っていることは感じた」と語り、辞職の是非は「市民のみなさんのとらえ方」と述べるにとどめた。

 中田市長と橋下徹・大阪府知事らが進める「首長連合」に参加を表明している阿部孝夫・川崎市長は「次の選挙に出ないかもしれないとは聞いていたが、寝耳に水で本当に驚いた」と話した。「今後はほかの首長と協力して、地方自治を進めていきたい」と話した。

 首長連合の結成に同調した露木順一・開成町長は「思い切って政治活動に軸足を移したいという気持ちだと思う。ただ(一緒に)活動している立場からすると、横浜に根ざした政治活動を展開してほしかった」と語った。【木村健二、川端智子、澤晴夫】

 ■市民の声

 横浜市の有権者は市長の「決断」をどう見たか。まちで聞いた。【インターン・安藤伊都子、上田岳雄、椎名美佳】

 ◆都合良すぎ/続けて/国政で活躍を

 ◇港北区の無職、菊池真成さん(20)

 衆院選に合わせた辞職は都合が良すぎる。開国博Y150が盛り上がってないのに辞めるのは人任せすぎる。

 ◇栄区のエンジニア、尾花則雄さん(36)

 やはり総選挙に出たいのかな。Y150が中途半端だと危惧(きぐ)されているが(辞職による)影響はないだろう。

 ◇泉区の会社員、橋本和宏さん(58)

 今がいいと本人が区切りを付けたのだから、いいのでは。国政で活躍してくれるだろう。

 ◇西区の看護師、野村玲子さん(55)

 中田市長のように若い人が出てきたのは良かった。しがらみを断ち切れたこともあったかも。

 ◇中区の会社員、庄司智信さん(73)

 国政に戻る意思があるなら賛成。ただ、若く革新的な印象があり、続けてほしかった。

   ◇   ◇

 毎日新聞横浜支局で、中央大の安藤さん、立教大の上田さん、成城大の椎名さんの3人が職場体験学習(インターンシップ)をしています。8月7日まで記者として取材活動をしますので、よろしくお願いします。

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 ◇市民のために、このタイミング--発言要旨

 会見での中田市長の発言要旨は次の通り。

 先ほど市会議長に辞職の願い出をしてきた。7年4カ月前に市長選に初出馬をした時に出した政策集でも今年度2009年を目標にしてきた。期限を区切って仕事をしないといけないと考え諸改革をしてきた。今年度までの予算執行で計1兆円の負債を減らした。仕事の区切りをつけ、どのタイミングで退くか正月から考えていた。

 衆院選が任期満了近くになったら、市長選を同じタイミングでやった方が市にとってプラスと確信していた。

 9月以降は予算編成が本格化する。来年度を見据えた新市長が行うのが望ましい。横浜開港150周年事業も一段落した。特に(来年、横浜市である)APECの準備も進めなければならない。国政と一緒にやると、11億円かかる市の選挙が10億円節減できる。私自身の2度の市長選は投票率は30%台。もっと高い投票率で新しい市長を選ぶことが大切。市民のためにこのタイミングで決意した。

 今後は政治団体「『よい国つくろう!』日本国民会議」に力を注いでいきたい。首長連合(グループ)の発信も私が公職から離れフルタイムで力を注いで参りたい。市民、議会、職員、多くの皆さんに感謝を申し上げたい。

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 ◆中田市政の歩み◆

02年 3月 政令市では最年少の市長(当時)に初当選

    8月 住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)で「横浜方式」導入を打ち出す

    9月 政策・財政・運営を連動させた「横浜リバイバルプラン」発表

03年 1月 ゴミ排出30%減を目指す「G30」発表

    3月 行革プラン「新時代行政プラン」を発表

   10月 横浜市大が独立行政法人化などを盛り込んだ改革案を提出

04年 2月 みなとみらい線開通

06年 3月 過去最高の得票率で再選

    7月 住基ネット全員参加

07年 4月 市営バス路線を再編

08年 3月 市営地下鉄グリーンライン(中山-日吉駅)開業

08年 5月 アフリカ開発会議(TICAD)開催

   12月 「横浜みどり税」条例が成立

09年 3月 APEC開催決定

毎日新聞 2009年7月29日 地方版

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