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神奈川の生徒情報流出、50歳男逮捕 著作権侵害の疑い

2009年7月29日14時22分

 神奈川県立高校の06年度の全在校生約11万人分の個人情報がインターネット上に流出した問題で、流出したファイルを入手し、共有ソフト「シェア」でさらにネット上に流出させて日本IBMの著作権を侵害したとして警視庁は29日、東京都八王子市館町、無職川嶋一洋容疑者(50)を著作権法違反容疑で逮捕し、発表した。

 調べに対し、川嶋容疑者は「ファイルの欠陥を指摘したのに無視されたのでシェアで流出させた。この行為が著作権法違反だとは知らなかった」と否認しているという。

 この問題は、IBMが同県立高の授業料徴収システムの開発を業務委託した協力会社の社員のパソコンがウイルスに感染したため、約11万人分の情報が共有ソフト「ウィニー」のネットワーク上に流出。川嶋容疑者は昨年6〜7月、ウィニーを使って入手したという。

 同庁生活経済課とハイテク犯罪対策総合センターなどによると、川嶋容疑者は昨年11月、生徒約2千人分の氏名、住所、授業料の振替口座番号などの個人情報を含むIBMのシステム開発用ソフトを、シェアを使ってネットに流出させ、IBMの著作権を侵害した疑いがある。その他の約10万人分余りの個人情報については「まずいと思って流さなかった」などと話しているという。

 川嶋容疑者のネットへの接続記録を解析したところ、昨年9月にネット掲示板に「IBMの開発資料を入手した。本番データ、10万人はあるかも」などと書き込んでいた。

 警視庁によると、11万件の個人情報は、ウィニーやシェアなどのファイル共有ソフトのネットワーク上で流出し続けており、削除は不可能という。IBMが今年6月、同庁に告訴していた。

 ファイル共有ソフトによる個人情報流出を直接取り締まる法律はない。ファイル共有ソフトに絡んだ著作権法違反事件では、08年3月、福岡県警が、住宅地図最大手ゼンリン(北九州市)の電子地図を無断でインターネット上に公開したとして兵庫県警の男性巡査を同法違反容疑で書類送検。同9月には京都府警が、国内未公開の米映画に字幕を付けてネット流出させたとして、無職の男を同容疑で逮捕するなどしている。

 日本IBMの広報担当者は「再発防止に向けて、社内で情報管理を再度徹底している」としたうえで、「事件に関するコメントは控えます。必要に応じて捜査に協力していきます」と話した。

 神奈川県教育委員会の山本正人教育長は「詳細を把握していないが、インターネットを介して個人情報を意図的に流出させる行為に対する抑制効果が極めて高いと受け止めている。行為を規制できる法律が速やかに整備されることを望む」との談話を出した。

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