ここから本文です。現在の位置は トップ > 地域ニュース > 大阪 > 記事です。

大阪

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

がんを生きる:/40 精巣腫瘍/下 「生かされている」使命感 /大阪

 ◇体験語り、患者支える存在に

 睾丸(こうがん)のがん、精巣腫瘍(しゅよう)に冒され、転移、再発を経て健康を取り戻した改發(かいはつ)厚さん(37)が闘病記を公開しているホームページ(HP)やブログには、現在も1日約40件のアクセスがあるという。「(あなたが)生きてることが、勇気です」。同じ病気と闘う人から、そう言われる存在になり、「姿勢を正して生きなければ」と思う。

 退院した当初、医師から「再発の可能性は60%」と言われた。4年たった現在も、その確率はまだ十数%残っている。がんになって、改發さんの中で「生」に対する意識が変わった。「命の期限を実感すると、今一瞬を全うしようと思うようになる」。周囲の人への感謝の気持ちや許しを請うことなど、「これまで、伝えるべきことを後回しにできたのは、生きていることが前提だったから」と気付いた。

 退院後、子どもたちから「おとうは厳しくなった」と言われる。宿題や後片付け、あいさつなど「今できることは今やれ」「手を抜くな」と教えている。「できるくせにやらないのは、ひきょうだ」と思うからだ。

 「生かされている」という使命感も強くなった。「生きるために、死ぬ思いで治療した。医者から『治るかどうか分からない』と言われながらも、生きている。これってすごいなぁと。今は生きているだけで楽しいから、がむしゃらにやることが全然苦痛ではなくなった」

 闘病中、いろんな人に支えられた。その分、今度は自分が支える存在になりたいと、がん患者を支援するNPO「キャンサーネットジャパン」(事務局・東京都)の活動に参加している。これまでも、HPやブログを通して個人的な相談を受けてきたが、これからは、組織の器できめ細かくフォローしたいという。今年6月には、同NPOが神戸市内で開いたがんセミナーで、約150人を前に自身の体験を語った。

 今後は、再発のショックやつらい副作用で苦しむ患者のための相談会や、治療で外泊できない人のために、病院に出向く訪問相談などが目標だ。「私のように、進行したがんでも治るんだということを伝えたい。そして、精巣腫瘍のことをもっと知ってもらい、苦しまずに完治できる治療法の開発を後押しできれば」。目指す治療法が確立されるまで、改發さんの活動は続く。

 ◇ ◇

 改發さんの闘病記は「難治性精巣腫瘍闘病記」(ホンニナル出版、2000円)としても出版。「キャンサーネットジャパン」のHPはhttp://cancernet.jp/。【林由紀子】

==============

 ご意見や情報提供は、毎日新聞おおさか支局(ファクス06・6346・8444、メールat‐osaka@mbx.mainichi.co.jp)まで。

毎日新聞 2009年7月28日 地方版

大阪 アーカイブ一覧

 
郷土料理百選
地域体験イベント検索

おすすめ情報

注目ブランド