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高麗茶道 日本に深い影響<上>
2006-04-05
優雅な所作の韓国茶道
韓国茶道・伝統礼節協会日本東京支部長の李瑛子さんによる茶会でのお点前
臨済宗の僧・栄西の茶会様式も類似

作法広めた高麗遺民
朝鮮朝の拝仏政策で渡日

 草庵茶室の狭小な空間に侘(わび)、寂(さび)の小宇宙を創出する日本の茶道。日本オリジナルと信じられていた千利休に至る日本茶道の確立期に、高麗時代の茶道が大きな影響を与えていた。また、日本に中国(宋)から茶の儀礼を伝えたとされるのが臨済宗の僧・栄西だが、彼の茶会の様式も、本家の宋のスタイルより高麗の茶礼により似ている。日本茶道の発祥に高麗の茶道が深くかかわっていた事実を検証する。(吉成繁幸)

茶会王国の高麗時代

 韓半島および日本列島に茶が最初に持ち込まれたのは、ともに7世紀から8世紀頃と見られている。『三国史記』「新羅本紀」によると、善徳王の治世(632〜646年)に入唐廻使が唐から茶種を持って来て、地理(智異)山に植えたという記載がある。日本でも、奈良時代(8世紀)に聖武天皇が茶をたしなんだという文書が正倉院にある。これも唐から遣唐使が持ち込んだものだろう。

 その後日本では遣唐使の廃止とともに飲茶の習慣は一旦途絶え、再び日本に茶を伝えたのは、平安時代末期、宋に留学していた臨済宗の僧・栄西である。

 新羅では飲茶の習慣はその後も盛んで、朝鮮史学者・三品章英氏の『新羅花郎の研究』には、「煎茶が一種の宗教的儀礼として花郎の行事に取り入れられ…」とあり、「花郎茶道」のような儀礼が存在していたことを指摘している。

 高麗時代、韓国の歴史の中でも最も飲茶の風習が盛んになる。禅宗の僧侶たちにより宋で行われていた最新の茶道が伝えられ、多様な茶会が行われていた。宮中では茶礼という儀式作法が行われ、文人たちは風流を楽しむ茶俗を、禅僧たちは求道的な茶風をたしなんでいた。ちなみに高麗の茶は、新羅の煎茶に対して抹茶である。

 栄西が日本に茶を伝える半世紀ほど前、高麗を訪れた宋の使節の日記(『高麗図経』)に、高麗の茶会を記録した部分がある。

 そこでは、「高麗式作法では暖かい茶が飲めない、中国にはない1日3回の供茶を行い、茶を薬としてありがたがっているだけだ」など、侮蔑的表現で高麗の茶会は宋のものとは似て非なるものだと述べている。ところがこの高麗の作法が、栄西が宋から日本に伝えたとしている茶会の作法に非常によく似ているのだ。 京都五山のひとつ、臨済宗・建仁寺では、栄西の誕生日の4月20日に四頭茶礼という茶会が開かれる。これは14世紀末(室町時代中頃)に書かれた『喫茶往来』という本の記述通りにとり行うもので、栄西の往年の作法をよく伝えているとされている。

 『喫茶往来』の様式は後に千利休が確立した茶会の様式にも強い影響を与えており、日本茶道の原点というべきものである。詳細は省くが、茶道具の使用法、茶に対する考え方、茶の飲み方(3回の供茶など)が『高麗図経』に書かれている高麗式作法とそっくりなのである。栄西は、宋から直接に帰国したのではなく、帰路に高麗に立ち寄り、高麗式作法を日本に伝えた可能性も十分に考えられる。

商人だった千利休

 朝鮮朝が成立すると、政府の排仏政策の影響を受け、多数の僧侶や高官、文化人らが追放された。その頃、日本では室町幕府の支配力が弱まり、各地の守護大名が力をつけ始めていた。特に西国の大内氏は非常に大きな存在だった。領土は中国地方の大部分と北九州(貿易都市・博多を含む)に及び、もう一つの貿易都市・堺も支配していた。

 大内氏は朝鮮朝との貿易をほぼ独占し、追放された多数の高麗遺民が大内氏を頼って来日していた事実がある。大部分は僧侶や高官、文化人である。今も博多や堺には高麗町が残っているが、そこは彼らの居住地の名残りである。

 彼らは祖国の茶会を貿易都市に持ち込み、貿易の当事者である商人にその作法が広まっていった。後に日本の茶道を確立した千利休が武士でも貴族でも農民でもなく、堺の商人であったことには必然的な理由があったのだ。

(2006.4.5 民団新聞)
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