’09都議選

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民主、追い風に乗り/自民、衝撃の大敗(その1) /東京

 127議席を221人で争った都議選の投開票が12日行われ、当選者が次々と決まった。選挙結果は国政の動向をも左右するとされ、最後まで全国から注目された。大きな争点だった自民、民主両党の対決は、民主党が第1党の座を手中にした。五輪招致や築地市場移転問題など都政の課題に今後、どう取り組むのか。多彩な顔ぶれに期待が集まる。

 ■中野

 ◇初の2議席獲得、無党派層に支持浸透

 「風が吹いた」。定数4を6人で争った中野区では、民主現職の吉田康一郎さん(42)と新人の西沢圭太さん(30)の2人が当選し、民主党が初めて2議席を獲得。「民主躍進」を象徴付ける選挙区となった。

 中野区は、国会で年金問題などを追及した長妻昭衆院議員(民主)が出馬予定の東京7区の一部。吉田さんと西沢さんは告示前から長妻氏と街頭演説を続けて組織力の弱さをはねのけ、無党派層に支持を浸透させた。

 3月末から選挙活動を始めた長妻氏の元秘書、西沢さんは当初、知名度不足が心配されたが、公営掲示板に長妻氏と写ったポスターを張るなど「ミスター年金の元秘書」をアピール。団体からの推薦は無く、若いスタッフと自転車で区内をくまなく回る「手作り」の選挙戦だったが、民主に吹いた追い風も生かし、支持を広げていった。

 再選を果たした吉田さんも「コンクリートより人に予算を」と訴え、石原都政を批判。前回当選時からの知名度も生かし、終始安定した選挙戦を展開した。【前谷宏】

 ■青梅

 ◇山下さん初当選、野村さんの5選阻む

 青梅市では、民主新人の山下容子さん(50)が、5選を目指した自民現職の野村有信さん(68)を破って初当選。「保守王国・青梅」で半世紀ぶりに自民が議席を失った。

 ラジオ局でアナウンサーなどを務めてきた山下さん。民主の公募に応じて3月に公認を得たが、青梅に地盤を持たないなど当初は苦戦が予想された。

 選挙戦が進むにつれて「民主の風」に乗り次第に支持を広げていった。「環境」をキーワードに、排ガスの少ない軽自動車を選挙カーに選び、屋根には二酸化炭素の吸収に優れた植物の花壇を載せるなどユニークな選挙戦を展開。告示日に麻生太郎首相が第一声に選んだ青梅を制し「自民退潮」の象徴にと、菅直人代表代行ら幹部が次々と応援に入り、てこ入れを図った。

 都議会会派の幹事長などを歴任した野村さんには、石原慎太郎知事らが応援に入ったが、民主の風に押され半世紀にわたって守り続けてきた議席を失った。【袴田貴行】

 ■府中

 ◇民主系独占ならず

 府中市では、自民現職・比留間敏夫さん(75)と民主新人・小山有彦(くにひこ)さん(33)、無所属現職・備(そなえ)邦彦さん(61)の実質三つどもえだったが、小山さんと比留間さんが制し、自民と民主で議席を分け合う形となった。

 小山さんと前回民主の公認争いに敗れた備さんは前回からの“内紛”を引きずった。民主党都連は備さんの支援を告示4日前に決定し、当選後の会派入りを約束。民主系候補での議席独占を狙った。

 小山さんには菅直人代表代行が何度も応援に駆け付けるなど連携をアピール。自転車で市内を駆けめぐるなど若さも前面に打ち出し、追い風に乗った。備さんは連合傘下の旧同盟系労組の組織内候補で、同じ労組系の幹部も支援に駆け付けたが、浮動票を取り込めなかった。

 比留間さんは自民への逆風に加え、高齢批判にさらされ、厳しい戦いを強いられたが、公明の推薦も受け、後援組織などを手堅くまとめた。【野口由紀】

 ■文京

 ◇共産・小竹さん落選

 文京区は、自民、民主、共産の3人が2議席を争う構図。前回05年選挙は、鳩山太郎氏の無所属出馬で保守分裂模様になり、共産党の小竹紘子氏(67)がトップ当選。だが、今回は自民対民主の構図が強まる中、小竹氏は当選ラインに届かなかった。

 小竹氏は選挙中、「都政は『自民か民主か』ではなく『オール与党か共産党か』だ」として、共産党の存在感をアピール。選挙戦後半からは「女性現職」を前面に出し、保育園の待機児童対策や高齢者医療費の問題などについて強く訴えた。

 また、志位和夫委員長も告示後、3日にわたり応援に駆けつけ、党の総力を挙げて議席の死守を目指したが、かなわなかった。【田村彰子】

 ■武蔵野

 ◇出産を経て松下さん再選

 武蔵野市では、出産のため出遅れも懸念された民主現職・松下玲子さん(38)が菅直人代表代行のおひざ元で、民主への追い風を受けて再選を果たした。

 松下さんは昨年6月に長男を出産。子育てと議会活動の両立で、選挙に向けた準備が遅れ、菅代表代行から叱咤(しった)されることもあったが、春ごろから活動を本格化。菅代表代行と一緒に写ったポスターを作るなど、民主への追い風を存分に活用、現職の知名度を生かし勢いに乗った。

 自民元職の小美濃安弘さん(46)は前回落選後、地区単位で後援会作りを進めてきた。政権選択選挙の前哨戦と位置づけた民主の戦略に流されず、地域に根差した選挙戦を展開したが及ばなかった。【野口由紀】

 ◇期日前投票は前回比83%増

 都選挙管理委員会は12日、都議選で期日前投票をした人が前回比83%増の87万5195人だったと発表した。

 衆院選の前哨戦として注目度が高まっていることが背景にあったと見られる。

〔多摩版〕

毎日新聞 2009年7月13日 地方版

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