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クラスター禁止条約:「必然の流れ」福田前首相

オスロ条約について語る福田康夫前首相=衆院第1議員会館で、山本晋撮影
オスロ条約について語る福田康夫前首相=衆院第1議員会館で、山本晋撮影

 不発弾が市民を殺傷しているクラスター爆弾の使用や保有を禁止する「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」批准案が10日、参院で可決され、批准が決まった。有志国や非政府組織(NGO)主導の軍縮交渉「オスロ・プロセス」から生まれた条約は、新しい軍縮のスタイルを提示、長く閉塞(へいそく)状態にあった日本の「平和外交」に新たな活路を開く可能性もある。ただ、廃棄への模索は始まったばかりで、在日米軍の保有弾との整合性など残された課題も多い。【鵜塚健、仙石恭、花岡洋二】

 「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」案に日本が賛成した昨年5月当時、在任していた福田康夫前首相が毎日新聞との単独会見に応じ、条約案賛成が自らの指示だったことを初めて明らかにした。クラスター爆弾の使用を従来「人道、人権上の問題で厳しい」と疑問視しており、賛成は「必然の流れだ」と述べた。有志国や非政府組織(NGO)による軍縮交渉を「必ずそういう方向が出てくる」と評価。核軍縮にもつながるとの見方を示した。

 オスロ条約は、有志国やNGOによる軍縮交渉「オスロ・プロセス」で議論され、昨年5月末のアイルランド・ダブリンでの会議で日本を含む各国が条約案賛成を決めた。

 会議に臨んで前首相は「『他の国が決めたから、日本が決めた』というみっともない格好だけはするな」と積極姿勢をとるよう政府代表に指示。現地と連絡を取り「最後は既定方針通りに決めた」と語った。この際、米軍に「異存はない」ことを確認したという。

 外務省に対しては、安全保障上の問題▽外交上の国際世論との関係▽米軍との関係--の間で調整するよう「1回ではない」複数回の指示を与えていた。

 クラスター爆弾は日本では上陸してくる敵を攻撃する際に使う想定だったが「一斉に列を組んで大量にやってくるわけではない」「人道上厳しくなっており本当に使えたかどうか」と想定自体に疑問を示した。

 また前首相は、同条約の締結で生まれた国際的な軍縮への機運が「核兵器を持つことの無意味さ、核拡散をどう防ぐか(という議論)にもつながる」と期待を込めた。

 オスロ条約非加盟の米国とについては「日本が軍縮をやるのであれば米軍にも言わなければいけない」としたうえで、在日米軍に不使用を求める議論は「日本を守る米軍の手足を縛っていいのか。現実的に見極めなければならない」と述べた。【鵜塚健】

 ◇日本外交新たな活路

 「(当時は)大騒ぎ。悩んだ末の承認だった」。オスロ条約と同様に有志国やNGO(非政府組織)が主導した「対人地雷禁止条約」を日本が批准した98年当時、外務省軍備管理・科学審議官として直接担当した阿部信泰・日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長(外務省参与)は振り返る。

 地雷は核や生物化学兵器と違い、自衛隊が使用を想定する兵器だったため、禁止条約の批准には反響があまりに大きかった。

 しかし今回のオスロ条約については「地雷禁止の時の学習プロセスがあり、防衛を担う側の人道的観点への理解が進んだ」と政府として落ち着いた対応だったとみる。

 阿部所長は、日本外交について「大胆に旗を振らないことを非難される。しかし軍縮は、軍事的観点と人道的観点のバランスの問題。責任ある立場で現実問題も考えながら素早く行動した」と今回の批准決定に新しい日本外交のスタイルを見いだす。

 特にNGOとの協力については「今回はNGOが、物事を動かそうと思えば動くと証明した。犠牲者を助けたり、人道主義を広めるのはNGOにやってもらいたい。政府も協力する。NGO、専門家、政府などが互いに切磋琢磨(せっさたくま)しないといけない」と強調する。

 軍縮分野ではオバマ米大統領が核廃絶を究極の目標として唱えているほか、兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉にも積極的だ。

 市民主導の軍縮条約としては劣化ウラン弾が次の対象とも言われ、サイバー戦争やバイオテク兵器などの規制も注目される。

 日本が今回培った「新たなスタイル」をどこまで活用できるかが問われている。

毎日新聞 2009年6月10日 21時31分(最終更新 6月10日 22時32分)

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