突然の悲劇が嶋田を襲う。2回、青コーナー付近で踏ん張った足が滑り、開脚するような不自然な形で転倒。すぐに立ち上がったが、この時に負った左もも裏の痛みが、挑戦者から本来の動きを奪った。
「足がつった状態が12回まで続いた。悔しい。パンチは見えていたのに…」
回を重ねるにつれ、モーゼスの鋭い左ジャブが入り出し、嶋田の顔面がみるみる紅潮していく。トレーナーを務めた元世界2階級制覇王者・柴田国明氏(62)は「前の試合で使った水が残っていた」とスリップの原因を振り返り、悔しさをにじませた。
往復約3万キロに及ぶ、アフリカ南部ナミビアでのチャレンジ。観戦した2人兄弟の兄・太造さん(39)は「足を引きずりながらボクシングをするなんて、考えられないことだ」と弟のガッツをたたえた。
昨年6月、世界初挑戦に失敗。一度は引退も口にしたが、「あきらめたらすべてが終わってしまう」と生き方を問うた。元統一世界ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)にあこがれ、プロボクサーになることを決意。富山一高を卒業すると渡米し、ニューヨークにあったタイソンの自宅まで押し掛けた。門前払いされたものの、情熱のパワーを信じている。日本人最年長の王座奪取の夢を追い「再戦を希望したい。ネバーギブアップ」。アフリカの大地で再出発を宣言した。