2009-07-26 「みちくさ市」終了
昨日、「みちくさ市」終える。前回、前々回より、人出が少なかったようだが、天気がよく、知り合いもずいぶん来てくれた。水戸芸術館で「WALK」(日記特集)を作った辻山くんが、東京人になって、挨拶に来てくれた。小ぶりの段ボール一箱送って、大きめのリュックに当日、詰め込んで運んだのを売る。お隣りは書肆紅屋さん。途中、ノンちゃんに交代してもらって、会場をひとまわり。いい本あるなあ、と感心してみてたら、マイミクのアイスさんだった。店名忘れたが、仲のいいカップルの店から見たことも聞いたこともないマンガ、青野春秋『俺はまだ本気出してないだけ 1』を250円で買う。レトロで素敵な紙袋に入れてくれた。帰りの電車で読んだが、これはダウナー系の傑作。続きが読みたくなった。むかしなら「ガロ」に載るような作品だ。40になって会社を辞めて、朝からゲームをやっているダメダメ太っちょメガネのシズオ。妻なし、可愛くよくできた高校生の娘(ただし、風俗でばったり会う)、ガミガミ息子を叱る年老いた親父と同居。このシズオ、「お前は何がしたいんだ?」という父親に、「後悔したくない? 本当の自分を見つける?」と答える。そして、いきなり「漫画家になる」と言い出す。いやあ、まったくダメかと思ったら、バイト先の若い子がケンカに巻き込まれたのを救おうとしたり、小学生にまじって野球を楽しんだりする。憎めない奴なのだ。
これは越川さんが映画にしそうな。
あ、「みちくさ市」の話。帰って来たら、ノンちゃんが店番をしていた方がよく売れたようだ。なかに、古本おみくじで「エロ」(吉、に見えるがエロ、というのが入っている)を引いたまじめなおばさんが、ものすごく困って「もう一回引かせて」というのを、「いやあ、本をもう一冊買ってもらわないと」とノンちゃんがねばり、もう一冊買わせた。すると今度は「大吉」だったという。さすが、大阪出身や! ノンちゃんにはバイト料として一冊プレゼント。
そして、なんといっても話題は「とみきち」さん命名の「はにかみ高校生」だ。ちょっとレトロなファッションに身をつつみ、帽子をかぶり、いつも一人で、ハニカミながら古本買う、その所作、たたずまいがあまりに高貴で、皇室っぽい。いや、本当に皇室のやんごとなき方が、お忍びで古本を買いに来た風情なのだ。いつくるか、いつくるかと騒いでいたら、ついに登場。ぼくはふつう、絶対しない、というか、いま使っている携帯では初めて使う撮影機能で、ハニ高を盗撮する。ぼくの店の前に来たので「X高校の高校生でしょう?」「いま何年」「どこから来たの」と矢継ぎ早にインタビュー。ハニカミくん、首を15度ぐらいまげ、黄金の微笑を崩さないまま、当惑しながら、消えてしまいそうな声で答える。どうも、埼玉在住の高校二年生で、好きな作家は「安岡章太郎」だそうだ。平成の高校生で安岡章太郎好きな高校生がいるとは! これはなんとか売りつけようと、「学割でどれでも半額」と言って、植草甚一スクラップブック『私の読書法』を300円で売る。
早くハニカミくんのことを話したいのに、電柱の蔭でいつまでもたたずんで荷物をいじっている。遠ざかっていくその歩みの高貴でのろいこと。ぼくなら、50メートルで足がつりそうな遅さだ。
晩鮭亭さんに店番をたのんで、あわててほかの店に「ハニカミくん、来た、来た」と伝令でまわる。工作舎の石原くんもパッと眼を輝かせ「そうですか!」と手ぐすねひいている。大変な騒ぎだ。そのあとも、えんえんハニカミ話で、なんだか疲れて、もう売る気を失い、早々と店じまいをする。
そうそう、友人の画家、オーライタローくんが「こんちは」と顔を見せ、聞くと、プレ「みちくさ市」で店を出した「三愚舎ぎゃらりー」に絵を出している、というので見に行く。いつも建物ばかり描いているが、今回は静物をエッチングで表現した四点。
打ち上げはパスして、帰宅の途についたら、中央線はやけに浴衣姿の男女が多い。そうか、昭和記念公園で花火大会があるのだ。国立で降りるころにはすごい混雑になっていた。いやあ、くわばらくわばら。
帰って、お好み焼きを食べて、風呂へ入って、ビール飲んだら、もうなんにもやる気が怒らない。すまん、○○くんと謝って寝てしまう。