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民主党は24日、公明党幹部の選挙区で、衆院選の目玉と位置付けていた東京12区と兵庫8区の候補を発表した。小沢一郎代表代行の立候補もとりざたされた東京12区には、民主党参院議員の青木愛氏を立てる。兵庫8区では新党日本代表の参院議員、田中康夫氏を推薦し、双方を「刺客」として送り込む格好だ。一方で、土壇場で小沢氏の国替えを見送ったあたり、将来を見据えた公明党への「気遣い」も感じさせる。これで小沢氏は、岩手4区からの出馬が固まった。民主党は当初、この3選挙区で候補擁立を終える意向だったが、東京都議選大勝などの勢いをかって24日、空白だった群馬4区でフジテレビ勤務、三宅雪子氏の公認を固めた。神奈川8区も擁立方針に転じた。
青木氏が挑む東京12区は、公明党の太田昭宏代表の地盤。兵庫8区に出る田中氏は、冬柴鉄三元国土交通相と対決する。
24日の候補者発表は、両選挙区に会場をセットし、開始時間も午後3時にそろえた。小沢氏が東京12区、鳩山由紀夫代表が兵庫8区でそれぞれ候補者と並んで記者会見した。一方、太田氏も同日、「相手をよく存じないが、勝利に向け一層力を注ぐ」と強調した。
小沢氏の東京12区への国替え騒動は昨年、当時幹事長だった鳩山氏がテレビ番組で可能性に言及した。太田氏の地盤に民主党代表(当時)の小沢氏が乗り込む可能性をちらつかせることで公明党を揺さぶるとともに、首都決戦で話題を集め、選挙戦を民主党に有利に持ち込む狙いがあった。しかし西松建設による違法献金事件が発覚。5月には小沢氏が代表を辞任し、現実味は薄れていた。
青木氏は小沢氏系の比例代表選出の参院議員。転出しても民主党の参院議席数に変動はない。それでも候補者調整は難航したとみられ、青木氏への打診は今月17日だった。小沢氏も「最初から彼女ではなかった。この方というのが(別に)一人、二人いた」と認めた。
小沢氏が国替えを見送った裏には、将来をにらんだ配慮もうかがえる。鳩山氏は24日の会見で、「小沢氏が出馬していたら、公明党との関係は決定的なものになっていた可能性がある」と語った。公明党との関係を断絶させたくない、との本音が顔をのぞかせた。
民主党が当初擁立を見送る方針だった群馬4区、神奈川8区で一転、積極姿勢に変わった背景には、東京都議選や主要首長選で示された民主党への追い風を受け、「厳しい選挙区でも勝てる」と判断を改めたことがある。
群馬4区は福田康夫前首相の選挙区。小沢氏は今週、地元関係者を党本部に呼び出して意向を聴取。党本部主導で人選を進める方針を決め、週明けにも小沢氏が現地入りして発表する。
神奈川8区は、自民党を離党した渡辺喜美元行政改革担当相に近い無所属の江田憲司氏の地盤。江田氏と相打ちを避けるため、小沢氏主導で民主候補を転出させた経緯がある。だが小沢氏は24日、「地元は候補を立てたいとの思いは強い」と擁立容認に転じた。民主党関係者は「動向の分からない他人に議席を譲ることはない」と語る。【渡辺創】
毎日新聞 2009年7月25日 東京朝刊